バイオマスモノマーを用いた主鎖生分解性ゴムの開発と機能化

髙坂泰弘
(信州大学繊維学部 テニュアトラック助教)

2017年3月27日月曜日

日本化学会東海支部長賞

先週末,当研究室の第2期生3名が無事に卒業しました.

全員が大学院に進学しますが,まずは無事に一区切りです.
今年は予想以上に成果も上がり,1名は既に私と連名で特許を申請しています(詳しくはこちら).論文もあとは書くだけ,という段階まで来ていて,まもなく発表できるでしょう.

そして,2年目にして成!


学部4年生の宮崎君が,日本化学会東海支部長賞を受賞しました!
私は未だ,ほとんど講演賞を頂いたことがないので(1度だけ奇跡が起こりましたが),デビュー戦でこの戦果はまったく驚く限りです.

これを励みに,研究室にも弾みが付くとよいですね.

2017年3月21日火曜日

専門書あれこれ

先週は1週間全国各地を転々とする毎日で,とても大変でした!
その収穫がたくさんの専門書だったので,今回は本のお話です.

大学に合格し,初めて専門書を買ったのが約15年前のいま頃でしょうか.
当時は教科書の値段にびっくりしたものです.1冊5千円前後の本を10冊も買い込むと,もう5万円ですからね.

いまになって考えると,ベストセラーの教科書ならフルカラー刷りでも1冊5,000円程度,原色カラーの図鑑を買ったと思えば安いものです.
一方,研究に使用する専門書は発行部数が少なく,1冊10,000円~は当たり前で,数年前に私が執筆した本70,000円以上もします.
ここまで来ると,研究費で買うにしても,さすがに躊躇する値段です.

さて,そんな専門書ですが,新品,最新刊でも安く購入する方法があります.
それは,学会に参加することです!

学会は研究発表や情報交換の場ですが,同時に企業が専門機器の見本市を開催していたり,市民向けの公開講座が開かれていたりします.
出版社の即売所もあり,そこでは卸売価格に近い値段で専門書を購入することができます.複数の専門書を見比べながら購入できる数少ないチャンスですので,私の場合,ほぼ毎回,参加するたびに本が増えてしまいます.


というわけで,今回はこんなラインナップになりました.
今回は専門書ではなく,一般書や演習書が主です.

まず紹介したいのは「カリカリベーコンはどうして美味しいにおいなの?(東京化学同人)」です.
これは一般書,雑学読み物の部類で,身の回りの化学を紹介する内容です.
授業のブレークで使う小ネタの情報源として最適ですし,化学の本なのにおしゃれなページが続くので,スライドの作り方,見せ方や話題の切り出し方の勉強にもなります.

それ以外は,有機化学の演習書2種類を買いました.
このシリーズは名著として名高い定番の本なのですが,研究室の学生の勉強に最適ですし,講義の課題や小テストなどを作る際にも大いに参考になります.

また,写真には写っていませんが,計算化学のマニュアルも買いました.

専門書にもよりますが,本の内容すべてが欲しい情報と言うことはまずなく,大概は既に知っていたり,関係なかったりするものです.
とはいえ,知識を体系的にまとめた書物を読むと頭の中が整理されますし,様々な専門書に分散した情報を集めて再構築すると,新しい研究のヒントになります.

そんなわけで,本がどんどん増えて行ってしまいます.
よく,大学教授のインタビューで,背中の向こうにたくさんの本が並んでいる光景が写されますが,こうした事情で(?)構築される景色なんです.


新しい本だけが有用とは限りません.
最新の本には最新の学説が書いてありますが,なぜそこに至ったのか,他に考え方はなかったのか,などの過去の経緯は古書を当たるしかありません.

先日,私の恩師の退職に伴い,廃棄予定の本を譲って頂く機会に恵まれました.




この本はたいへんな名著で,著者はもれなく高分子化学の巨星です.私は何度もこの本を読みましたが,こうして手元に残すことができて,大変ありがたく思います.

他にも,素晴らしい本だと思いながら,出版社の廃業などの事情で絶版となった入手困難な書籍もあります.
来週,神保町の近くに出張があるので,久しぶりに古本屋に発掘に行こうか考え中です.








2017年3月7日火曜日

【実験動画】1滴ずつゆっくりと


先日購入したシリンジポンプを初稼働しました!



この機械は液体試料(薬品)を注射器にいれ,一定速度で射出したり吸引したりできる装置です.

仕組みは至って簡単で,注射器の内径と希望する射出/吸引速度を入力すると,プランジャー(ピストン)の押出速度が自動的に計算されるので,後は所定の位置に注射器をセットするだけ.
写真では,左の機械にセットされたシリンジ(注射器)から長い針が伸びています.
針先は右端にあるフラスコに,ゴム栓を通して接続され,ここから試薬が注入されます.
おもちゃの風船にはアルゴンガスが充填されていて,反応容器の内容物が空気に触れないよう密閉されています.

詳しくは下記の動画でどうぞ.

video


シリンジポンプを初めて見た学生からは,「安直な装置ですね」との感想も聞こえました.が,こういう単純な目的の装置は構造が単純な方がメンテナンスもしやすく,下手に複雑で高機能だったり,外見が洗練されていたりとすると,かえって面倒です.

今回の実験では,1時間に20 mLの滴下速度で試薬を反応容器に加えていきました.
なぜこうした操作が必要になるかというと,一気に試薬を加えると反応熱が急激に生じて危険だったり,反応の初期と後期で濃度を変更して実験したかったり(料理で調味料を何回かに分けて加えて,食材の煮え具合に合わせて味をしみこませるイメージに近い),いろいろです.

上記は昨年発表された論文に従った手順で実験していますが,正直こんなに慎重にやる必要はないのでは・・・とも思いますが.

2017年2月19日日曜日

閲覧回数が15000回を超えました!

お陰様で当ブログの閲覧回数が15000回を超えました.

「そんなことでいちいち投稿するな」と言われそうですが,私は掲示板世代でして,キリ番を踏んだらコメントするよう慣らされているのです.

近況についても報告したいことがあるのですが,いかんせん先日インストールしたATOK先生から,「いい加減に休め」と言われ続けて3時間が経過しました.

いつの間にそんな機能が!と驚きつつ,私自身もこの後,深夜の道路を運転して帰る必要があるので,またの機会にしたいと思います.あしからず.

2017年2月14日火曜日

ベルギーへ向けて

今日はバレンタインデー,バレンタインとればベルギーチョコ・・・と無理矢理のこじつけですが,5月にベルギーで講演することが正式に決まりました.

The 12th International Conference on Advanced Polymers via Macromolecular Engineering (APME2017) 日本語訳:高分子工学による先進ポリマーに関する国際会議
リンク先に私の写真が載っています)

会場はヘントという奈良のような街で,
日本ではサッカーの久保裕也選手が在籍しているチームの本拠地として有名です.

発表は先日の論文を中心に,最新の研究成果について講演する予定です.
この実験の成果も話しますよ!
いま,詳細を詰めるべく実験を進めていますが,早く論文にもしたいところです.
正直,内心予定を(いい意味で)狂わせるような大発見がないかと期待しています.

今年は(予算があれば)イギリスにも行く予定なので,またいろいろと現地レポートできればと思います.

2017年2月11日土曜日

論文に嬉しい反響!

先日発表した論文が,印刷体として正式に出版されました.


Polymerization of α-(halomethyl)acrylates through sequential nucleophilic attack of dithiols using a combination of addition–elimination and click reactions

Yasuhiro Kohsaka,*   Keito Hagiwara and    Keiichiro Ito

Polym. Chem., 2017,8, 976-979






そして予想外の嬉しい反響が!

なんと,最近引退されたこの分野のパイオニアから「面白かった」とのメールが.
もちろん私は20~30年前に出版されたこの方の論文を何度も熟読していますが,直接の面識はありません.
海を越えた遙か遠くの,世代的にも私の父と同じくらいの研究者から,こうして感想を頂けるとは光栄です.

また,現在では廃刊になった雑誌(私は知りませんでした)に掲載された,30年前の論文を紹介していただきました.
早速図書館に向かうと,なんとその論文があったんです!

私の所属する信州大繊維学部の図書館には,驚くほどに素晴らしい蔵書があります.
これは研究をする上で貴重な財産なのですが,今回,まさにその財産の恩恵を享受したわけです.

早速論文を拝読すると,報告されている実験結果自体は予想の範疇に収まるものでしたが(30年前の論文ですから,その成果の上に立って研究している私の立場からすれば,内容が予想通りなのは当然です),なんとその一節に驚くべき記述が!そこには,将来展望としてある現象を仮定しているのですが,それはまさしく私の最新の研究結果(上記論文とは別)に繋がる内容だったのです.

もちろん,かなり拡大解釈すれば,という注釈がつきますし,その現象の解釈も大きく異なるのですが,30年前にその可能性について言及されていた,その事実に改めて敬意を表したいと思います.

実は昨年の学会でも,この分野の別のパイオニアで,すでに第一線から引退された先生にお声がけいただきました.今回の論文に関して,ご興味を抱かれたようです.

こうして研究を通じて,世代や国籍を超えてお話ができるって,嬉しいですね.
まぁ古くさい研究をしていると言われればそうなのですが,それが私の趣味なので致し方ないかと.

また,この論文について海外で講演する機会に恵まれたので,そちらも嬉しく,かつ,ありがたく存じます.
春には研究室も増員ですので,期待以上の成果が発表できるよう,今度も頑張りたいと思います.

2017年2月8日水曜日

卒論のスライド作り

卒論や学会の前になると,ふだんとは違う仕事がやってきます.

それは,発表スライドの作成指導です.

もちろん,私は広告代理店やデザイナーではなく,一介の科学者に過ぎません.
当然格好よいスライド作りは教えられませんが,それでも自分の経験から,学生を指導するのが務めです.

それで,これはなかなか辛い業務だなと思い始めました.
状況が説明しにくいので,少し具体的に考えてみましょう.

皆さん,「5分で話せる桃太郎の紙芝居を作ってください」と言われたら,どんな絵を描きますか?

こういうのはおおよそ相場が決まっていて,

1. 洗濯してたら桃が流れるの図
2. 桃から赤ちゃんが生まれるの図
3. 旅立ちの図
4. 仲間が集まる図
5. 鬼ヶ島での戦絵巻
6. 宝箱を運んで凱旋の図

まぁ,こんなところでしょうね.
なぜこうスラスラと答えられるかというと,物語の要点や名場面が把握できているからだと思います.

実は研究発表のスライドも同じで,まず研究をスラスラ説明できるほどに頭を整理しないと,うまい発表が作れません.研究の課題と目的,実験とその解釈,そして成果の評価を把握してから作業に取りかかるべきです.

逆に先にスライドから作ってしまうと,場合によっては削除せざるを得なくなります.
例えば先の桃太郎で「精巧な柴刈りの図」を描かれてしまっても,5分の枠内でそれを活かすことはできないのです.とはいえ,あまりにも立派なスライドだと,削除するにも哀れな気分になります

さらに悲劇的なのは,実際に研究で苦労した部分と,発表で強調すべき部分が一致しない点です.例えば9ヶ月かかった実験と,その結果を受けて実施した2週間の実験では,後者の方が大事だったりします.
このあたりを冷静に受け止められると助かるのですが.「あんなに苦労したのに発表しないのかよ!」と恨まれると,私も困ってしまいます.いつもフォローに気を遣う部分ですね.

情報過多のスライドは,混乱を生むだけで逆効果です.
例えば「スターウォーズの内容で5分の紙芝居を作れ」なんて無茶な要求です.
この場合は主人公のみにスポットを当てるか,大局のみ説明するか,思い切った情報の削除が必要でしょう.

研究も同じで,大局に影響しない,例えば「念のため確認しておいた」ような実験は,質問が来ない限り表舞台には登場しません
(論文でもページ制限があると割愛しますが,これらは別添資料として発表するので,まだ状況はマシです).

こうして苦労した実験が日の目を見ることなく終わると,ますます悲しくなります.

華のある研究発表ですが,指導者にはむしろ残酷な作業なのかもしれません.