バイオマスモノマーを用いた主鎖生分解性ゴムの開発と機能化

髙坂泰弘
(信州大学繊維学部 テニュアトラック助教)

2015年5月22日金曜日

学会①:学会発表へ向けて

来週は札幌で学会です.
しばらく更新も止まると思いますが,ご容赦下さい.

ということで,学会とは何か?という話題を当面のネタにしつつ,それに関わる研究者の裏側を紹介しようという趣向で連載します.


以前に,音楽で言うところのCDが論文,ライブコンサートが学会と述べました.
学会は研究者が一堂に会する場で,最新の実験データを元にお互いに成果報告し,情報交換するイベントです.

例えば来週は,「高分子学会」に参加しますが,この学会には日本全国の「高分子科学者」が参加します.
大学・研究所の研究者だけではなく,総合化学メーカーや材料メーカーなど,関連する企業のエンジニアの皆さんも参加して,いわゆるシーズ研究(将来開花しそうな研究の種)を探しに来たり,共同研究先と打ち合わせをしたりもします.
また,意外にも参加者の大半はプロの研究者ではなく,プロを目指す大学院生なんです.
最新の研究成果は実験者である学生が主に行います.これは,教育的な意味もありますし,実験者が一番事情をよく知っているからでもありますね.

最近はグローバル化も進んでいて,今回は私は英語で講演をします.
本当は講演の準備・練習をしたいのですが,来週不在にする関係で他業務がとても忙しく,なかなか手に着かない状況です.

その一つが,これ.


そう,実験です.
先週,凡ミスでできなかった実験も,ようやく開始することが出来ました.
新人に教えながらなので,超スローペースで進捗しております.



2015年5月18日月曜日

いろんな薬品のおはなし

今日は実験ナンバー003の紹介をする予定だったのですが…

次の実験に必要な薬品を発注し忘れておりました!

なんという凡ミス!

東京や大阪と違って,ここ長野では最低でも納品に2~3日はかかるので,飛んだ大誤算になってしまいました.
こうなると,ブログのネタもないので,薬品のお話でもしようとおもいます.

Q1. 薬品はどこから来るのか?

薬品は化学工場で生産され,卸売会社・仲買・代理店などを経て研究室に納品されます.
私はプラスチックの合成が研究テーマですので,当然ながら石油由来の薬品が多いのですが,今回の助成テーマのように植物由来の成分を使う場合や,岩石由来の薬品もよく使います.
例えば,食塩やふくらし粉も使っていますよ.

Q2. 薬品はどんな見た目?どのくらい使う?

早速写真を見てみましょう.


これは溶剤やガスを乾燥するときに使う,モレキュラーシーブス(分子ふるい)と呼ばれる薬品で,試料にダメージを与えずに水(と一部のアルコール)だけを吸収する便利な薬品です.
瓶の中から透けて見える,不思議な形が特徴的ですね.
この薬品はあくまで乾燥剤なので,用途にもよりますが,500 g購入すれば1年は持ちます.


これはアセトアルデヒド,二日酔いの原因物質です.
今度の実験で大量に使用するので,500 gで購入していますが,正直こんな厄介な薬品使いたくないです. 見た目は透明な液状ですが,非常に気化しやすいので,特殊な冷蔵庫で保存しています.







これは,クロロホルム.名前を着たことがあるかもしれませんが,よく刑事ドラマでガーゼに浸して,誰かの口に当てて気絶させるシーンに登場する薬品ですね.実際,そんなことしても,むせる だけです.
クロロホルムはトリハロメタンの一種ですので,水質汚濁の話で聞いたことがある方もいるかもしれません.


比較のためにセロテープを並べてみましたが,大きいでしょう.
当研究室では,一斗缶 (18 L缶)で購入しています.プラスチックはだいたい何でも溶かしてくれるので,実験するときにとても便利なんです.

Q3. なんで危ない薬品を使う?

一概に危ない薬品といっても,大きく2種類があります.
一つは,火災や爆発の原因になる危険物,もう一つは人体に有毒な毒劇物です.

危険物を使う理由は簡単です.
まず,プラスチックの研究ですから,当然石油由来の燃えやすい薬品を多く使います.
もう一つの理由は,化学反応が目的だからです.
化学の実験では,薬品を組み合わせて化学反応を起こし,新物質を作りますが,こうした原料は反応性が高いので,空気中の酸素や水とも激しく反応することがあります.逆に言うと,何とも反応しない不活性な物質から,新物質を作るのは至難の業ですね.それを実現するのが「触媒」なんですが…
危険物は消防法の取締り対象ですので, 大学で保管量の上限が決まっているほか,保管場所も厳密に規定されています.

毒劇物を使う理由は,単純には説明できません.
人間の体内でもたくさんの化学反応が起きていますから,化学薬品の中には,体内の組織と反応して,体調を崩す作用を持つ薬品が沢山あります.その中でも特に少量で致死量に達する薬品が,いわゆる毒劇物ですね.先に登場したクロロホルムも劇物です.

そんなわけで,施錠管理している話は以前にもしました.


実は施錠管理だけではなく,管理台帳(データベース)で保管場所・量も厳格に管理されています.これは毒劇物に限ったことではなく,全ての薬品は購入から廃棄まで,常に管理下にあるのです.



Q4. 薬品のお値段は?


助成金を申請する際にも,研究費の大半を薬品代として計上しました.
実際,薬品はかなり高いんです.何せ危ないものですから,輸送費だけでも大変なコストになりますしね.


この薬品,さっき18 Lで購入していることを紹介した,クロロホルムと同じですが,
ふつうのクロロホルムがだいたい 18 Lで1~2万円程度なのに対し, これはたった100 mLで1万円以上します!お値段にして約20倍!

その違いは何かというと,クロロホルムを構成する水素原子 (H) が,重水素 (D) という自然界に0.002% (50000個に1個の確率)でしか存在しない原子に置き換わっているんです.

言ってみれば,ブロイラーに対して,特別なエサだけで育てたブランド地鶏みたいなもの.
こんな薬品も研究に必要なんです.

2015年5月15日金曜日

新しい論文が出ました(しばらく無料公開中)

今日は論文を相手にした一日でした.

論文と言ってもイメージがわかないと思いますが,いわば科学者同士の情報交換ツールの一つです.
学会発表とは違い,その場限りではないので,研究の公式記録と呼べるかもしれません.

音楽でたとえると,学会がライブコンサート,論文がCDといったところでしょうか.
そして,CDにもシングルとマキシシングル,アルバムがあるように,論文にも速報,報文,総説と3種類があります.

速報(音楽で言うシングルCD)はその名の通り,重要な発見を迅速に伝えるための短い論文で,通常2-3ページ程度です.英語だと今でもコミュニケーションとかレターといって,急いで広く伝えたいニュアンスが残っていますね.
報文(マキシシングル)はいくつかのデータをまとめたり,速報にその後の実験を追加したりして,説得力を出した論文です.
そして,総説(アルバム)はたくさんの論文から,ある概念を伝える教科書のような記事です.

今日無料公開された私の論文は,この総説に相当します.
一定期間を過ぎると有料になりますので,興味のある方はお早めにどうぞ.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/koron/advpub/0/advpub_2015-0003/_article/-char/ja/

また,今日は速報も一つ投稿しました.
非常に面白い研究成果なので,いつか紹介できればと思います.

そして,論文の査読も行いました.
昨年,ニュースでも論文不正が話題になり,査読についても注目されましたね.
これは,研究者同士が投稿された論文の内容を審議して,妥当な成果か,科学的に矛盾はないか,他人の成果を盗用していないか,などを審査する仕組みです.
もっとも,論文と同様の手法で再実験をしていたら,時間も掛かりますし,お金もかかります.
そもそも査読は公平のため,秘密裏にボランティアで実施しますから,再実験のために費用を申請するわけにも行きません.
そんなわけで,審査と言っても,データの解釈や論理に関する指摘が大半で,まさか実験データ自体が捏造,改ざんの産物である,なんてことまで審査しません.
この点が大きな問題になったわけですね.

最後に,月刊「化学」で興味深い記事を見ました.
それは,若かりし頃のニュートンが,重大な発見について論文を書いた物の,若気の至りで表現が甘く,ホイヘンスなど当時の著名な科学者から「掲載拒否」の結果を受けたという内容でした.
ニュートンは30年以上後に論文を書き直し,「掲載許可」に至るのですが,記事ではその過程から若手研究者に論文の書き方を指南していました.
現代にも通ずる査読や論文執筆の慣習が400年近く前に確立していたということで,非常に面白い記事でしたね.

研究は,論文に成って初めて「成果」として認められます.
私も沢山論文が書けるように,尽力したい限りです.


2015年5月14日木曜日

研究者はマルチタレント?

一概に研究者と言っても,組織や立場によって,仕事は様々です.

企業の研究者の場合,恐らく全事業のうちのある部門の,そのまた一部の製品の周辺を担当することが多いのではないでしょうか.
理研や産総研の研究者の場合,文字通り最先端の研究に専念することが出来ます.

一方,日本の国立大学の研究者の場合は,「研究者」は一部の顔でしかありません.

例えば先月,私は研究室の立ち上げで器具の調達や研究費のマネジメントをしました.
これは企業で言うところの,「庶務」や「経理」「経営」の仕事ですね.

大学ですから,当然ながら講義をしたり,実習で指導をしたり,研究を牽引したりします.
これは,「教育」の仕事ですね.

また,今の時代,研究費は自分で稼がねば成りません.
国際科学技術財団の助成金も,企画書を書いて申請した結果です.
これは,「プランナー」としての仕事ですね.

研究室では,企業や他の研究者の方と共同研究することもあります.
このとき,私の研究を「売り込む」ことになるわけですから,ある意味「営業」の仕事かもしれません.

いま,こうしてブログを書いていますし,論文や専門書以外にも.一般向けに本を執筆することもあります.
このときは「文筆業」に従事しているわけです.

研究室のホームページを作る「ウェブデザイナー」でもあり,通訳や英文の和訳をする「翻訳者」でもあり,壊れたガラス器具を修理する「ガラス細工職人(これ,実はかなり大事)」でもあり,調子の悪い分析機器を解体して整備する「メカニック」でもあり,そして講演を多数こなす「文化人タレント」でもあります.

ここまで来ると,もはや自分の職業が何だか分からなくなりますね.
私はまだ若手なので,「政治家」ではありませんが.


もちろん,全てを完璧にこなせる人などいないので,得手不得手,皆さんそれぞれの領分で活躍されています.
だから,

講義が下手な先生を決して馬鹿にしちゃダメですよ! (でも,文句は言いましょう…少しは改善してくれるかもしれません)

もちろん目が回るほど忙しいのですが,これだけ多様な仕事に携われる職業,ベンチャー企業でも立ち上げない限り,なかなかないですよ.
その辺りが,この職業の好きなところでもあります.
逆に,研究に専念できないからと,分業制度が確立された海外に異動する研究者もいます.

 
それでも,これだけは誇りを持ってハッキリ言えます!

私は「研究者」です!

2015年5月13日水曜日

実験002 合成した分子の構造を特定せよ!

こんばんは,高坂です.

更新が深夜になってしまうのは,単純に研究者が忙しいからです.
なぜ忙しいのか?何をしているのか?については,またいつか紹介しますね.

さて,今日は先日の実験で合成した分子の構造解析をしました.
構造解析と言っても,当然ながら目に見えるようなシロモノではありませんので,特殊な分析機器を使って調べます.

一概に調べると言っても,その原理はさまざま.(→難しい話を飛ばしたい方はこちらへスキップ)
簡単に並べると,

(その前に,念のため
分子 = 原子が結合した集団,CO2とか.新聞紙新分子を作るのが私の仕事です.
原子 = 化学で扱う物質の最少単位のCO2なら炭素Cが2つで酸素Oが1つ,とか.私はこれを結合させるプロです.
元素 = 原子の種族,周期表にのっているヤツ.私はこのごく一部しか操ることが出来ない.

A: 分子全体の構造を調べる方法
  • 分子全体の重さで調べる - 質量分析法
  • 分子全体を構成する元素(炭素,水素…)で調べる - 元素分析
  • 分子全体を構成する原子の配置で調べる - 単結晶X線構造解析 

B: 分子を構成する基本パーツから調べる方法

  • 水素や炭素の原子核の周辺環境から調べる - 核磁気共鳴分光法
  • 特徴的なパーツの有無を調べる - 赤外分光法 

C: 分子が持つ固有の性質から調べる
  •  融点測定
  • 屈折率測定
などなど.それぞれ長所・短所があるので,通常はAから1つ,Bはすべて,Cはオプションで実施し,これらすべての解析結果が一致しないと,新物質として認められません.

合成化学者と言えど,合成しているだけじゃないんですね.

さて,今日実施したのは,このうち太字で書いた,核磁気共鳴分光法,通称NMR (Nuclear Magnetic Resonance spectroscopy) です.

この装置はその名の通り,強力な磁場環境に分子を投入し,電波(ラジオ波)を当てて分子からの返答を「聞く」という分析方法です.

かなり噛み砕くと(こんな言い方怒られそうですが),分子を構成する各原子核を叩いて,それが共鳴振動する周波数(音階みたいなもの)から,原子がどういった環境に置かれているのかを分析します.

では,どのくらい強力な磁場かというと,ふつうの永久磁石や電磁石ではパワー不足で,超伝導体を使った超強力磁石を使用します.
余りに磁場が強くて,下手に電子機器を持ち込むと壊れるので,今回はYouTubeから北陸先端科学技術大学院大学のビデオを拝借します.



ビデオの冒頭に2階建てのバケモノのような装置がありますが,これが磁石です.
ハシゴでよじ登って,数ミリグラム~数十ミリグラムのサンプルを分析するんですから,恐ろしい話です.

無事に分析は終わり,結果的に予定通りの分子が合成できたことが分かりました!
が,その場に居合わせた4人のうち,私以外の3人はチンプンカンプン.
学生にとっては初めての経験で,しかも合成化学とは全く違う物理のなので,これから勉強するんです.

というわけで,明日は実験を中断して,この分析方法について講義することになりました.
研究者の卵を育てるのもまた,研究者の仕事です.



事故が起きた,そのときのために

化学実験で一番おそろいのは事故です.

皆さんが思う科学者のステレオタイプ(この辺りもいつか記事にします)はどんなものでしょうか?
よくあるイメージは,試験管の中の液を混合して,

どかーん!

と爆発する,アレですよね.

実際,あんな毎日だったら,消防署から怒られてしまいます.
恐らく実験停止処分とか,何らかのペナルティがあるでしょうね.


そんなわけで,今日は事故と安全対策のお話です.




まずは,以前にもコメントを頂きました,廊下にあるシャワーです.
これは薬品を頭から被るような大事故が発生した場合に,それらを洗い流すための装置です.
家庭用のシャワーと違って,ONのみ.一度取っ手を引くと,タンク (4 Lくらい)が空になるまで水が一気に流れ出します.
化学実験をする組織なら,どこにでもあるのではないでしょうか.

では,使ったことはあるのか?と言われると,私は経験したことがありませんね.
年に1,2回,水の入れ替えと点検の目的で流す程度です.


続いて,こちらも定番の消火器です.
消火器って,いろいろな種類があるんですよ.
例えば,消火剤の溶液が出てくるタイプがありますが,化学系や電気系の火事でこれを使うと逆効果です. 化学系の火災の多くは,水と激しく反応する物質(金属ナトリウムなど)が原因で発生するので,さらに水溶液をかけると事態が悪化しますからね.
電気系の火災では,単に機器がショートして漏電するだけです.

ここにあるのは,粉末式消火器.他に,二酸化炭素式も有効です.
また,消火砂という乾燥した砂をバケツに入れておき,火災時に火元に一気にかけることも あります.

残念ながら,消火器は使用経験が豊富です.
幸い,人損・物損ともに被害は出したことはないのですが,実験中に発火・引火して消火器で消火したことは何回かあります.

当然ながら,消火器の特性や火災ごとの消火方法は熟知していますね.
これはもちろん,事前の座学で頭にたたき込んだ物ですが,実際に訓練や地域の防災館を訪ねて,消火器の使用についても身につけておくことが肝心です.

 
  
水にも気を配る必要があります.
以前に,利根川水系にヘキサメチレンテトラミンという薬品が流れ出て,ホルムアルデヒドが検出されて大騒ぎになったことがありますね.確か,あのときは1日~2日間は断水だったはずです.

このように,薬品を水に流すなんて,言語道断です.
上のポリタンクは,薬品や実験廃液を貯蔵・保管し,産廃処理業者に託すためのタンクです.
ちなみに,実験系の排水はきちんと監視されていて,異常があるとすぐに排水を遮断できるようにもなっています.


この写真は以前にも登場しましたね.ドラフトチャンバーといって,有毒ガスの漏洩を防止する風防です.
写真では分かりませんが,ものすごい勢いで周辺の空気を吸い込みんでいて,ティッシュペーパーなんか吸い込まれてしまいますし,下手をすると部屋のドアがドーム球場の出口みたいに,閉まらなくなったりします.
これくらいのパワーで吸引すれば,まず毒ガス漏れの事故は起こらないでしょう.

このように,火・水・空気すべてに対する対策が施されています.
他にも,白衣など実験者自身を守る装備品もあります.記事が長くなったので,機会があればまた紹介しましょう.


 
 

2015年5月11日月曜日

実験ナンバー001

2015年5月11日,待ちに待ったこの日がやってきました!
そう,記念すべき実験第1号です!!


残念ながら,フラスコはアルミ箔に覆われていて,詳細をお伝えすることが出来ません.
これは別に企業秘密やら知的財産やらで隠しているわけではなく,中の反応物が光に弱く徐々に分解することがあるので,料理用のアルミ箔で遮光しているのです.
(実際は,この段階に至るまでに実験装置も3段階の合体・変形をしたのですが,写真を取り損ねてしまいました)


今日の実験は以前にも実施したことがある実験の再現で,プラスチックの一歩手前の原料(モノマー)を合成する第1段階の反応です.
どの薬品も臭いがきついのですが,ドラフト(下記写真参照)と呼ばれる風防の中で実験しており,有毒ガスはすべて排気口を通してフィルターで除去されるため,環境負荷なく安全に実験することが出来ます(このドラフトにもいろいろな細則があり,最低年1回は点検報告を出す義務があります).


今日の実験は,試薬を混ぜるだけという簡単なもの.
もちろん,先ほどの臭いの問題も含め,試薬の安全対策や観察眼も要求されますが,その気になれば高校生でも実験できるでしょう.

では,なぜこんな簡単な実験をするのかというと,もちろん最先端に辿り着くまでの下準備ではあるのですが,それ以上に学生の教育が目的です.

フラスコを持ち,固定具で固定し,薬品を量り,それをピペット(スポイトの大きいの)でフラスコに入れ,そして変化を観察する…

たったこれだけの操作ですが,1つ1つに安全への配慮が欠かせませんし,それを自分で理解して事故を事前に防ぐ力が必要です.
言ってみれば,自動車で前に走るだけなら,サイドブレーキを引いてアクセルを踏むだけですから,それこそ高校生でも出来るでしょうけど,実際に交通ルールを守って,いわゆる「先読み運転」をしたり,何かあったときのためにタイヤ交換や心肺蘇生法を身につけるとなれば,自動車教習所に行ってライセンスを取得する必要があります.

大学の研究室でも,最先端に到達する前に,こうした基礎を徹底的にたたき込まれるんですね.
卒業時に授与される「学士」や「修士」の学位は,ある側面では,そのような訓練を経た技術の証明でもあります.

2015年5月9日土曜日

実験設備が揃った!

ついに,実験設備が揃いました.
(どういう状況かは過去ログを参照)

本日導入した設備は,ロータリーエバポレーターとその周辺機器一式です.


率直に申し上げると,自慢できるような装置ではありません.恐らく,有機合成の研究室には,必ずある基本設備です.

細かい話は後に回して,まずは何をする装置なのか?
日本語にすると,回転式(減圧)濃縮装置といったところでしょうか.
その名の通り,溶液から溶剤を蒸発させて,濃度を濃くする(濃縮)装置です.

この装置,合成化学とは無関係に見えて,実は必要不可欠な装置なんです.

たとえ話で恐縮ですが,
クリーニング屋さんは,洗濯することが仕事ですよね.
ですから,安直に考えたら,ドライクリーニングも出来るような,高性能洗濯機が商売道具です.
ところが,実際は乾燥機やアイロンがないと,洗濯物が処理できなくて,次の洗濯物に進めませんよね.

これと同じような話で,私たち合成化学者も,「合成」したあと,「後処理」(目標とする生成物以外の不純物を除く精製など)をしないと,次の実験に進めないのです.
今回導入したのは,まさにこの後処理のための装置です.

装置は,濃縮実験を行うフラスコ等の「ガラス器具」の他に,器具内部の圧力を下げる真空ポンプ,濃縮したい試料を加熱をする湯浴,蒸発した蒸気冷却して液体に戻す(凝縮する)冷却系,冷却液を循環させるポンプなど,様々な機械が組み合わさって出来ています.
写真で目立つ,緑の部分が冷却系の不凍液ですね.これは,自動車のラジエーターに使う不凍液と同じ成分です

正直,専門外の方には,訳が分からないと思います.
なぜなら,この装置は私どもの学生もほぼ初見に近い状態で,まさに仕組みを教授するところから研究指導が始まるからです.

ただ,こうして実験設備が揃って,いよいよ実験がスタートする,その高揚感と言いますか,研究室に流れる「やってやるぞ」という雰囲気を伝えたいのです.

2015年5月8日金曜日

Polymer Chemistry誌の中表紙に採用!

高分子化学の最高峰とも言える論文誌,Polymer Chemistry(発行:英国王立化学協会)の最新刊に, 

私の描いた絵が中表紙として掲載

されています.

Polymer Chemistry
http://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2015/py/c5py90069g#!divAbstract

こちらはRegisterからユーザー登録してLog inして頂ければ,どなたでも無料でダウンロードできます.

表紙に採用されるのは非常に名誉なことなのですが,気になるのは皆さんの絵のクオリティが非常に高いこと.
私は商用OK,加工OKのフリー素材を使っても,せいぜいこれが精一杯.
これでも,AdobeのIllustratorを使いこなしてしているので, 結構頑張っている方なんですが…

皆さん,プロのクリエイターでも雇っているのでしょうか.
それとも趣味?確かに,CG制作はハマるとなかなか楽しいんですが.

少し前に,生命科学で最高の雑誌 "The Cell"に,「ジョジョの奇妙な冒険」で有名な荒木飛呂彦先生が表紙絵を寄稿なさって,話題に上りましたね.

カッコイイ絵が描けるようになりたいものです.

さて,私の研究室では, 

研究発表の資料やスライドのデザインも重要視

しています.
これからの研究者は,こういったプレゼンテーションやコミュニケーションスキルも要求されることでしょう.

そんなわけで,研究室設立早々に,頑張ってHPも作ってみたのですが,いかがでしょうか.

高坂研究室ホームページ
http://www1.ka4.koalanet.ne.jp/kousaka/

2015年5月2日土曜日

研究者のコンプライアンス

コンプライアンス(法令遵守)は,研究者にとっても重要です.
特に私たち化学者は,毒物や毒ガスの原料も日頃から扱いますし,爆発物を製造することすらあり得ますから,コンプライアンスは肝に銘じなければ成りません.

例えば,研究室に出入りする薬品だけでも,化審法,PRTR法,毒劇物取締法,消防法など,様々な法令が関係してきます.
単に科学者と言っても,現代ではこうした法令の知識が求められるのですね.

さて,本日はその一環として,研究室のとあるトビラに鍵を設置しました.






これもDIYですので,単独では対した防犯対策ではありませんが,実際に薬品に辿り着くまでは,デジタルロック等も含めると何重もの鍵を開けねば成りません.

鍵の重さは,責任の重さです.科学者は社会的にかなりの重責を担っていると,改めて感じた一日でした.

2015年5月1日金曜日

アングルを立てる

アングルとは,フラスコなどのガラス器具を取り付けるジャングルジムのような金属パイプのフレームのこと.

昨日は東京から職人さんをお招きし,学生とともにこのアングルを実験台に設置しました.


ドリルで金属の支柱を打ち立てる孔を実験台に空けているところです.
もはや化学と言うよりDIYですね.

フラスコの底は丸いので,こうして打ち立てた支柱にぶら下げて使います.
これで,実験装置が自在に組めるようになりました!

記念すべき研究室1回目の実験は,もうすぐそこです.