バイオマスモノマーを用いた主鎖生分解性ゴムの開発と機能化

髙坂泰弘
(信州大学繊維学部 テニュアトラック助教)

2015年5月13日水曜日

実験002 合成した分子の構造を特定せよ!

こんばんは,高坂です.

更新が深夜になってしまうのは,単純に研究者が忙しいからです.
なぜ忙しいのか?何をしているのか?については,またいつか紹介しますね.

さて,今日は先日の実験で合成した分子の構造解析をしました.
構造解析と言っても,当然ながら目に見えるようなシロモノではありませんので,特殊な分析機器を使って調べます.

一概に調べると言っても,その原理はさまざま.(→難しい話を飛ばしたい方はこちらへスキップ)
簡単に並べると,

(その前に,念のため
分子 = 原子が結合した集団,CO2とか.新聞紙新分子を作るのが私の仕事です.
原子 = 化学で扱う物質の最少単位のCO2なら炭素Cが2つで酸素Oが1つ,とか.私はこれを結合させるプロです.
元素 = 原子の種族,周期表にのっているヤツ.私はこのごく一部しか操ることが出来ない.

A: 分子全体の構造を調べる方法
  • 分子全体の重さで調べる - 質量分析法
  • 分子全体を構成する元素(炭素,水素…)で調べる - 元素分析
  • 分子全体を構成する原子の配置で調べる - 単結晶X線構造解析 

B: 分子を構成する基本パーツから調べる方法

  • 水素や炭素の原子核の周辺環境から調べる - 核磁気共鳴分光法
  • 特徴的なパーツの有無を調べる - 赤外分光法 

C: 分子が持つ固有の性質から調べる
  •  融点測定
  • 屈折率測定
などなど.それぞれ長所・短所があるので,通常はAから1つ,Bはすべて,Cはオプションで実施し,これらすべての解析結果が一致しないと,新物質として認められません.

合成化学者と言えど,合成しているだけじゃないんですね.

さて,今日実施したのは,このうち太字で書いた,核磁気共鳴分光法,通称NMR (Nuclear Magnetic Resonance spectroscopy) です.

この装置はその名の通り,強力な磁場環境に分子を投入し,電波(ラジオ波)を当てて分子からの返答を「聞く」という分析方法です.

かなり噛み砕くと(こんな言い方怒られそうですが),分子を構成する各原子核を叩いて,それが共鳴振動する周波数(音階みたいなもの)から,原子がどういった環境に置かれているのかを分析します.

では,どのくらい強力な磁場かというと,ふつうの永久磁石や電磁石ではパワー不足で,超伝導体を使った超強力磁石を使用します.
余りに磁場が強くて,下手に電子機器を持ち込むと壊れるので,今回はYouTubeから北陸先端科学技術大学院大学のビデオを拝借します.



ビデオの冒頭に2階建てのバケモノのような装置がありますが,これが磁石です.
ハシゴでよじ登って,数ミリグラム~数十ミリグラムのサンプルを分析するんですから,恐ろしい話です.

無事に分析は終わり,結果的に予定通りの分子が合成できたことが分かりました!
が,その場に居合わせた4人のうち,私以外の3人はチンプンカンプン.
学生にとっては初めての経験で,しかも合成化学とは全く違う物理のなので,これから勉強するんです.

というわけで,明日は実験を中断して,この分析方法について講義することになりました.
研究者の卵を育てるのもまた,研究者の仕事です.



3 件のコメント:

  1. 追伸

    やっとできました!
    「難しい話を飛ばしたい方は」にえらく苦労しました.
    小細工は使わない方が楽ですね.

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  2. 中原です。
    良くわかりました!
    実験の内容ではなく、高坂さんのやって
    おられる事が難しいことが。。。

    チンプンカンプンX 10です。

    返信削除
  3. 中原さん

    そうですね,難しいです.
    これが理解できたら,私の下で勉強している学生の立場がないですからね.

    ただ,こういう巨大な装置を使って,何やら難しそうなことをしている,その雰囲気を伝えたかったのです.

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