バイオマスモノマーを用いた主鎖生分解性ゴムの開発と機能化

髙坂泰弘
(信州大学繊維学部 テニュアトラック助教)

2015年5月18日月曜日

いろんな薬品のおはなし

今日は実験ナンバー003の紹介をする予定だったのですが…

次の実験に必要な薬品を発注し忘れておりました!

なんという凡ミス!

東京や大阪と違って,ここ長野では最低でも納品に2~3日はかかるので,飛んだ大誤算になってしまいました.
こうなると,ブログのネタもないので,薬品のお話でもしようとおもいます.

Q1. 薬品はどこから来るのか?

薬品は化学工場で生産され,卸売会社・仲買・代理店などを経て研究室に納品されます.
私はプラスチックの合成が研究テーマですので,当然ながら石油由来の薬品が多いのですが,今回の助成テーマのように植物由来の成分を使う場合や,岩石由来の薬品もよく使います.
例えば,食塩やふくらし粉も使っていますよ.

Q2. 薬品はどんな見た目?どのくらい使う?

早速写真を見てみましょう.


これは溶剤やガスを乾燥するときに使う,モレキュラーシーブス(分子ふるい)と呼ばれる薬品で,試料にダメージを与えずに水(と一部のアルコール)だけを吸収する便利な薬品です.
瓶の中から透けて見える,不思議な形が特徴的ですね.
この薬品はあくまで乾燥剤なので,用途にもよりますが,500 g購入すれば1年は持ちます.


これはアセトアルデヒド,二日酔いの原因物質です.
今度の実験で大量に使用するので,500 gで購入していますが,正直こんな厄介な薬品使いたくないです. 見た目は透明な液状ですが,非常に気化しやすいので,特殊な冷蔵庫で保存しています.







これは,クロロホルム.名前を着たことがあるかもしれませんが,よく刑事ドラマでガーゼに浸して,誰かの口に当てて気絶させるシーンに登場する薬品ですね.実際,そんなことしても,むせる だけです.
クロロホルムはトリハロメタンの一種ですので,水質汚濁の話で聞いたことがある方もいるかもしれません.


比較のためにセロテープを並べてみましたが,大きいでしょう.
当研究室では,一斗缶 (18 L缶)で購入しています.プラスチックはだいたい何でも溶かしてくれるので,実験するときにとても便利なんです.

Q3. なんで危ない薬品を使う?

一概に危ない薬品といっても,大きく2種類があります.
一つは,火災や爆発の原因になる危険物,もう一つは人体に有毒な毒劇物です.

危険物を使う理由は簡単です.
まず,プラスチックの研究ですから,当然石油由来の燃えやすい薬品を多く使います.
もう一つの理由は,化学反応が目的だからです.
化学の実験では,薬品を組み合わせて化学反応を起こし,新物質を作りますが,こうした原料は反応性が高いので,空気中の酸素や水とも激しく反応することがあります.逆に言うと,何とも反応しない不活性な物質から,新物質を作るのは至難の業ですね.それを実現するのが「触媒」なんですが…
危険物は消防法の取締り対象ですので, 大学で保管量の上限が決まっているほか,保管場所も厳密に規定されています.

毒劇物を使う理由は,単純には説明できません.
人間の体内でもたくさんの化学反応が起きていますから,化学薬品の中には,体内の組織と反応して,体調を崩す作用を持つ薬品が沢山あります.その中でも特に少量で致死量に達する薬品が,いわゆる毒劇物ですね.先に登場したクロロホルムも劇物です.

そんなわけで,施錠管理している話は以前にもしました.


実は施錠管理だけではなく,管理台帳(データベース)で保管場所・量も厳格に管理されています.これは毒劇物に限ったことではなく,全ての薬品は購入から廃棄まで,常に管理下にあるのです.



Q4. 薬品のお値段は?


助成金を申請する際にも,研究費の大半を薬品代として計上しました.
実際,薬品はかなり高いんです.何せ危ないものですから,輸送費だけでも大変なコストになりますしね.


この薬品,さっき18 Lで購入していることを紹介した,クロロホルムと同じですが,
ふつうのクロロホルムがだいたい 18 Lで1~2万円程度なのに対し, これはたった100 mLで1万円以上します!お値段にして約20倍!

その違いは何かというと,クロロホルムを構成する水素原子 (H) が,重水素 (D) という自然界に0.002% (50000個に1個の確率)でしか存在しない原子に置き換わっているんです.

言ってみれば,ブロイラーに対して,特別なエサだけで育てたブランド地鶏みたいなもの.
こんな薬品も研究に必要なんです.

2 件のコメント:

  1. 高坂さん
    薬品のお話、興味を持って読ませていただきました。
    高価な薬品を実験の為に購入するのですから、実験の計画立案や検証など相当いろんなことが頭を駆け巡るんだろうな~と思います。
    こういった薬品を作っている人たち(=会社)も、注文の予測なんかどうやってやっているんだろう?といらぬ心配をしてしまいます。
    日本や欧米諸国などの先進国と開発途上国の研究者の間には、想像以上の絶対的な差があるんだなとも感じます。何はともあれ、研究頑張ってください。それと実験は気をつけてやってください。

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  2. 中原さん

    そうですね,実際に実験をするには,薬品の知識はもちろん,研究背景から器具一つ一つの操作方法まで必要になりますね.今日も2年生の実験を指導してきましたが,こうして学年の若い頃から継続的に学んでいく必要を改めて感じました.

    薬品会社も,ふつうの会社さんと同じですよ.
    マーケティングに相当する部分が特殊なだけです.

    研究者同士の温度差はすごくありますね.
    例えば私の研究でも,アメリカでは全く評価されなかった論文を,格上のヨーロッパ系の雑誌に再投稿したところ,大絶賛して頂いた経験が何度もあります.

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