バイオマスモノマーを用いた主鎖生分解性ゴムの開発と機能化

髙坂泰弘
(信州大学繊維学部 テニュアトラック助教)

2015年6月19日金曜日

新しい論文が出ました!(その1)

ご無沙汰しています,高坂です.

前職での教え子が頑張って成果を挙げてくれ,新しい論文が国際誌に掲載されました!


論文の概要: 高分子の末端修飾を達成する新しい化学反応

私は小さな分子を20~100個以上繋げて,巨大分子(高分子)を組み上げる反応(重合反応)の専門家です.

今回はアクリル樹脂の合成に関する論文で,
アクリル分子を繋げるときに,端っこの構造を制御する方法を見つけた,という内容です.

まぁ,言ってみれば,アクリル分子「A」を35個繋いだら,

AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA

となって,これが俗に言うアクリル樹脂なんですが,化学反応の最後にBを加えると,


AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAB

と繋がることがわかったんです.Aと違ってBは1個しか入らず,そこで反応が停止するので,停止剤と呼んでいます.

このBを起点に他の化学反応を行うことができて,例えば

AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAB--

なんて感じに,プラスチックと金属(鉄)を分子レベルで融合することもできる可能性があります.



今回の論文は,実はもっと重要な発見がありました.
難しい話なので,苦手な方は最後の数行手前まで読み飛ばして下さい.

さて,上に実験では,

AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA

を合成した後,反応の最後にBを加えてましたが, 
このときBと一緒にCを加えます. 
C停止剤ではないので,Cの後には,さらにCBが繋がることができます.
こうして反応は停止剤Bが反応するまで止まらずに続くので,

 AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAB
 AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAACB  
 AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAACCB
 AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAACCCB







と言う感じに,右端に Bがくっつく手前まで,Cが挿入されます.
一番上のBが入っていない高分子は,Cが反応する間もなくすぐにBが反応を停止すると生成します.要は,BCでどっちが先にAAAAAと反応するか,競争させています.

で,今回,  ABCBが分析装置で区別できることを発見しました.
これができると,

AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA

BCを一気に加えたときに,

すぐにBが反応するのか(右端がABになる),
とりあえずCが間に入ってからBが反応するのか(右端がCBになる),

これを区別することができます.

実際は一定の割合でそれぞれが生成するんですが,
この割合はBCの「反応のしやすさの差」を表しています.

こうして,いろいろなプラスチック原料の反応のしやすさを分析すると,
プラスチックを合成する際の化学反応のメカニズムを理解したり,
生成するプラスチックの組成を予測することができます.

最後は,かなり難しい話になってしまいましたが,

分子を1つ1つレゴブロックのように繋げてプラスチックを作る,
そのときの繋がり方をあの手この手で解析・予測していく

という雰囲気が伝われば幸いです.
 

1 件のコメント:

  1. 高坂先生
    本当は、難しい内容なのでしょうけど、小生でもなんとなく
    分かった気になりました。説明ありがとうございました。

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