バイオマスモノマーを用いた主鎖生分解性ゴムの開発と機能化

髙坂泰弘
(信州大学繊維学部 テニュアトラック助教)

2015年9月24日木曜日

実験設備の整備 その1

毎度,更新が滞ってすみません.

実はこの間いろいろなことがありまして,

1. 新しい論文が受理!
2. 仙台に学会出張
3. マレーシア科学連盟の70周年記念会議でで招待講演

と,実験や学生指導,大学運営以外にも大忙しです.
 どれも印象的な出来事だったので,次回以降に紹介しますね.

 ちなみに,この先は

4. 初講義
5. 科研費の申請
6. 米沢で開催される国際シンポジウムで招待講演
7. 横浜で開催される国際会議で講演

と,毎週大きなイベントが目白押しなので,更新もゆっくりペースになるかも知れませんが,ご容赦下さい.

 さて,前置きが長くなりましたが,今回の話題は実験設備の整備です.
前回,テニュアトラック制度普及・定着事業の一環で研究室の設立予算が付いたことを報告しました.

この1ヶ月で発注した設備のおよそ半分が納品されましたので,ご紹介します.


はじめに,ホワイトボード
研究者は議論が大好きなので,ホワイトボードは必須アイテムです!
むかし,マサチューセッツ工科大学 (MIT) で研究していたときは,実験室の壁全面がホワイトボードで驚いた記憶があります.やはり,議論は研究の源なんでしょうね.


こちらは,超音波洗浄機です.
単純に言うと,メガネの汚れを落とすアレと同じですが,もちろんパワーは桁違い.さらに,加熱装置とタイマー付きで,長時間使用にも対応しています.
この装置は汚れを落とすだけではなく,液体(石油系溶剤)に含まれる空気を抜くのに使われたり,溶けにくい結晶の塊を砕いたり,時には化学反応のエネルギー源(ふつうは熱を使うところを,超音波で代用)にしたりと,まぁ用途は様々.

これまで,水が500 mL入る小さな超音波洗浄機は持っていましたが,使い勝手が悪いので,20 L仕様の最高級品を購入してしまいました.

実は,これ,中古なんです.当初はもっとグレードの低い商品を新品で購入しようとしていたのですが,同じ値段で最高級品が販売されていて,中古とはいえ状態も良好だったので急遽購入しました.

私は研究者ですが,こういった調達や経営も1人でこなしているので,実は皆さんの想像以外の部分で忙しいのです.

こちらは分析天秤です.
0.1 mgまで,2-3秒で正確に秤量できる優れものです.

化学の実験では,理論や経験を元に薬品の混合比を予め決めておいて,体積や重さで秤量,混合して反応を実施します.

ピンとこないかもしれませんが,例えば皆さんが飲んでいる風邪薬を見ると,有効成分が0.5 mgとか書いてありますよね.これ,もし0.6 mgにもなると,僅かな差ですが2割増しです.そんな薬を飲んだら,効き過ぎてしまいますよね.逆に2割減では,全然効果が薄いでしょう.

こうして考えると,0.1 mgまで正確に秤量することが如何に大事なのか,ご理解頂けると思います.
今回,この装置が導入されたので,これまで10 mgで実施していた実験が,1 mgで実施できるようになります.こうなると薬品も節約できますから,経費も手間も削減できますし,何より実験で排出される有害物質が少量で済みます.

他にもたくさん装置が増えてきているのですが,長くなったので次回にしましょう.




2015年9月4日金曜日

テニュアトラック助教!?

皆さん,毎回このブログの冒頭に登場する,私の肩書きをご存じでしたか?

テニュアトラック助教

何とも不格好な字面ですね
私の名前が高坂(こうさか)と重箱読みであることも相まって,
ますますへんてこな感じです.

今日は,その「テニュアトラック」について紹介します.




日本の大学では,一般に

教授 - 准教授 - (講師) - 助教 - (ポスドク) - 大学院生 - 学部生

という職位(階級)があります.括弧内は臨時のポジションです.

各職位の役割分担は文系と理系,関西と関東で文化が違うんですが,
某サイトで関西で理系の場合を軍人で比喩していて,非常に解りやすかったので,
このアイディアを拝借して説明します.

教授 (将官/社長): 戦略統括,組織運営,資金調達
准教授 (佐官/部長): 教授を補佐しつつ,中隊を率いて独立作戦を指揮.
講師(課長): 助教と准教授の中間で,助教より講義など教育・運営業務が多い.
助教(尉官/係長): 現場レベルの細かい指揮,指導が主な業務.
ポスドク(軍曹/主任):  作戦の実行部隊

------(ここまで博士の学位が必要だが,プロの研究者で給料あり)-------

大学院生(伍長/正社員): 作戦の実行部隊(研修中)
学部生(二等兵/アルバイト): 見習い

という感じです.
ポスドクを雇える資金豊富な研究室はごく一部ですから,通常は研修中の大学院生が研究の主戦力です.


この制度ではチーム体制がしっかりしているので,全滅(倒産)という状況は滅多に起きません.
つまり,研究アイディアが全部はずれる,とか,研究資金がことごとく当たらない,というリスクが少ないので,安定して研究を進めることができます.

会社で言えば,大企業ですね.

その反面,若手の研究者は教授の戦略下で研究する場合が多いですから,
例えば合成化学の教授の研究室で,物理化学を研究する,という機会は限られます.

一方,海外のノーベル賞受賞者(最近では日本でも)を眺めてみると,
受賞対象となった研究は20-30代で着手していることが多いのです.

そういった背景もあって,若手研究者も独立して研究させよう, という試みが始まりました.
少し前に「助手」が「助教」に,「助教授」が「准教授」に改訂されたのも,この一環です.

それをさらに発展させた制度が,テニュアトラック制度です.
 
これは,若手研究者に完全に独立した研究環境を与えて,一定期間で成果を上げれば,正規の教員に採用するという制度です.

いってみれば,ベンチャー企業ですね.

まぁ,実際は日本の大学の運営システムを覆すことは難しく,名目倒れの場合も多いようですが,
信州大学ではこの理念に忠実にプロジェクトを推進しています.



私も幸い,この制度を利用した「テニュアトラック助教」に採用されましたので,
独立した研究水津で研究活動を進めています.


このたび,科学技術振興機構(JST)のテニュアトラック普及・定着事業に本学が改めて採用され,研究室立ち上げの特別予算が供出されることになりました.

お陰様で,研究室が急速に充実しつつあります.
明日から,その詳細を報告できればと思います.

納税者の皆さまに感謝しつつ,研究に励みたいと思います.

2015年9月2日水曜日

実験室で素敵な出会い

8月は研究室立ち上げで忙しかっただけでなく,特殊な実験もしました.

私は空気や水に弱い物質を使った化学反応が得意なのですが,その腕を見込まれてある実験を依頼されたのです.
こういった実験には特別な装置が必要なのですが,ガラス職人さんに注文した特注の器具はまだ手元に届いていません.そこで,とりあえず手元にある装置で実験をしました.

今日は,その中で見つけた綺麗な現象を紹介します.

初めに,青いフラスコ.



前回は朱肉で赤を出しましたけど,今回は研究に必要な物質の色ですよ~
時間が経つと,その物質がどんどん生成するので真っ青になります.





続いて,窒素ガスに含まれる水分を抜く工程です.
青い筒にはドライアイスとアルコールが詰まっていて,これでマイナス78度に冷やした乾燥剤を使って脱水するのですが…


長時間,マイナス78度に保って実験をしていたら,こんなものが!


わかります!?ドライアイスを入れた青い筒の内壁に,雪の結晶ができたんです!
いわゆる人工雪ですね.

雪の結晶というと目に見えないサイズですが,なんとこれは5 cmくらいまで成長して,かなり綺麗でした.まぁ,日常茶飯事なんですけど,綺麗なものは,いつ見ても綺麗です!


実験室では,本来の研究とは別に,こうした素敵な発見に出会えることもあります.

オープンキャンパス

更新が滞って申し訳ございません.
別に体調を崩したわけでもなく,仕事をサボっているわけでもなく,ただ単に忙しいかっただけです.
もちろん,お盆休みは頂きましたが...

今日も深夜2時という状況ですが,この際なので一気に連載してしまいましょう.

まず,7月26日に実施したオープンキャンパスの報告です.

研究室の入り口に飾り付け.


合成装置の紹介です.ピンぼけですみません.赤い液体は,実は朱肉のインクです.


減圧蒸留装置.ほぼフル装備です.組み上げるのも,片付けるのもかなり大変だった…


これは前回の記事でも出しました.フラスコではなく,クッキー型で樹脂を合成すると,可愛い形も簡単に作れます.


 フローズンハートの実験.これ,実は温度に応答する材料で,室温では固まっていますが…

氷水で冷やすと,何と水を吸って膨らみ始めるのです!
インク(また朱肉!)で内部を赤く着色してあるので,徐々に本来の赤色が見えてきます.

 

上の写真では,内部までまだ水が浸透していないので,中は白いままです.
白く見えるのは,高分子が凝集して光が散乱するから.
平たく言うと,干からびたゼリーです.



水が内部まで浸透して,燃えるようなハートが復活しました!
氷水なので,むしろ凍結寸前なんですがね.
氷のように冷たいときだけ透明になる,かわった材料です.

え,なんでハート型かって!?
大きなハート型のクッキー型が安かったから浪漫ですよ,浪漫.


この実験は,前に出したpH/温度応答性材料の論文の研究を解りやすく紹介するために実施したのですが,老若男女問わず,大好評でした!!

やっぱり,浪漫って見せ方って大事ですよね.