バイオマスモノマーを用いた主鎖生分解性ゴムの開発と機能化

髙坂泰弘
(信州大学繊維学部 テニュアトラック助教)

2015年12月10日木曜日

研究費の話:獲得までの長い道のり

前回,研究には年間数百万単位の資金が必要な話をしました.
では,それらの資金はどうやって捻出するのでしょうか?

会社員であれば,当然研究開発部の資金は,会社が工面します.
では,大学の研究者であれば,当然大学が…ほとんど工面してくれません!

研究者は,いわば独立採算の中小企業なんです.
大学としての基本業務は,講義をすることと,研究をすること.
研究については最低限の資金は配分されますが,いわゆる旧帝大のように百万円単位で資金が支給されることは,地方ではまずあり得ません.

以上は,国立大学の「運営費交付金」問題がニュースになっていることから,ご存じの方も多いかも知れません.いわゆる授業料2倍(95万円)の政策に関する記事です.
今の時代,大学の研究者は,自分で資金集めをするのが当たり前なんです.


研究者にとって最も重要なのが「科研費」.
これは,いわば税金の獲得競争です.カテゴリー別に,億単位の基盤Sから,登竜門の若手B(500万円以下)まで様々な序列があって,研究者自身が自分の研究規模や実績を踏まえて,応募するランクを決めます.研究内容は完全に自由で,用途も融通が利きやすいので,とても有り難い資金源です.当然倍率も高くて,基本的に日本の研究者のほぼ全員が応募しますから,私も当落が不安でなりません.よく,研究者は科研費が「当たる」なんて表現をしますが,実際宝くじ感覚の方も多いと思います.これが狙い撃ちできるのと理想的ですが.

10月~11月は,国際会議の合間で,科研費の応募に四苦八苦していました.
応募は所定のフォーマットに従って企画書や研究実績を記載する形式で実施しますが,審査する偉い先生方は全く同じ分野の専門家とは限りません.例えば私の場合,「高分子化学」が該当しますが,高分子学会では発表領域が20以上に細分化されていますから,全く同じ分野の先生が審査する確率はかなり低くなります.ですので,研究アイディアを分かりやすく,かつ面白く見せる文章や図の才能も求められます.

そう,研究者は,もはや「科学」一本では難しいんですよ.
いまでは「国語」や「語学」,「美術」も「情報技術」も超重要です.
余談ですが,私の研究室では,こうした技術も伝授しています.


科研費以外では,この国際科学技術財団のような,民間の財団からの助成が存在します.
民間助成は企業や篤志家による寄付ですから,設立者の理念が反映された研究課題が多く設定されています.例えば,「高度医療」「環境・エネルギー問題対策」「資源対策」などですね.
いずれも社会に求められている研究ではありますが,言い換えれば完全な自由発想というわけにも行かず,「私の研究は~~に貢献します」というPRが必要です.

私は材料開発を対象に新しい化学反応を見つける研究をしているので,「材料開発」を役立つ内容に,「化学反応」を自分の学術的興味に充当し,両社を巧く連結するテーマ設定を心がけています.やはり,企画書を送って申請する形式ですから,選抜を勝ち抜くためには,何らかの努力・工夫が必要です.



研究費獲得の最後の手段は,会社との共同研究です.
これも,企業の皆様の商品化に結びつくアイディアや技術力が必要ですね.また,学術研究と違って納期が短いので,成果を出すのが大変です.

共同研究を嫌う先生も多いのですが,私の研究はどうやっても,一人では実用化できません.
企業の方とタッグを組むことで,社会貢献することも重要だと思ってます.
実用化されれば,私が見つけた「夢」を現実に叶えて下さるわけですからね.



とまぁ,こうなってくると「科学」だけで科学者ができない事情が分かって貰えたと思います.
私はこれをエンジョイしていますが,やっぱり嫌になってしまう方も多いですよ.



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