バイオマスモノマーを用いた主鎖生分解性ゴムの開発と機能化

髙坂泰弘
(信州大学繊維学部 テニュアトラック助教)

2015年12月9日水曜日

研究費のはなし:用途編

皆さん,仲間由紀恵さんと阿部寛さん主演の「トリック」を見たことはありますか?
私は結構好きなんですけど,職業柄,毎回共感してしまうところが…

それは,物語の冒頭で,
 
 日本科学技術大学物理学教授・上田次郎(演:阿部寛)にゲストキャラクターがヘンテコな依頼をする場面で,

「 もし,この依頼に応えてくれれば,先生に研究費をば…」

で,上田教授は寂れた山村やらジャングルの奥地やらに赴き,エセ怪奇現象を…

という,この冒頭の部分.私もこんな依頼受けたら,ジャングルに行ってしまいそうですね.


というわけで,今回は研究費の話題を2回に分けて特集します.

学術研究をする上で必要なのが研究費.最近では,昨年社会を騒がせたSTAP問題の検証費用が,世間の金銭感覚を遙かに上回る額で,批判の対象になりました.

私は専門外なので分かりませんが,バイオテクノロジーは性質上,かなり研究費が必要なようです.私の専門の化学も,規模にもよりますが,やはり年間数百万単位は必要ですね.

何故こんな経費が掛かるかというと,化学の場合はまず,最先端の機械を使いますから,その購入費や維持費が半端ないのです.何せ,生産量も限られる完全受注生産品ですし,現在のテクノロジーの粋を集めた最新機材ですから.

また,意外にアナログな部分もあって,例えば私のフラスコ類は,すべてお手製です. ガラス器具には複雑な形の装置や,完全オーダーメイドの一点ものもありますが,いずれも職人技で作られており,言ってみれば伝統工芸品ですから,これまた高額なのです.

薬品も高価です.これは原料費など実費のほかに,輸送費も含まれています.薬品は危険なものが多いですから,法規制に従って厳重に輸送されます.当然,特殊な梱包や許可された特別車両での運搬が必要ですので,輸送コストだけでも大変な金額になります.

経費が出しにくいのが旅費と廃棄物の処理費.

まず旅費ですが,国際学会に参加する場合,会期中1週間前後の滞在費と,参加登録費(ふつう5万~10万),往復の航空券(当然エコノミー)を工面せねばなりません.参加登録費は,会場費や資料の印刷代が大半です.もともと営利目的ではないので,そこは良心的ですが,それでも科学者の自主開催イベントですから,結構な経費が掛かります.旅費・滞在費も1週間の会期だと,ほぼふつうの海外旅行並みになりますね.
原材料費と違って,こういった研究成果と直接関連づけにくい費用は,なかなか供出しにくいので,使途の制約がない研究費をいかに集めるかが重要になってきます.学会に出られなくなると,研究者コミュニティからも忘れられかねませんから,結構必死です.

廃棄物の処理費はもっと悲惨です.誰も,ゴミのために投資したくありませんよね.
しかしながら,実際はゴミ,いわゆる産業廃棄物は結構出ます.例えば,破れた手袋,使用済みの実験用注射針,濾過した後の汚れた濾紙,実験廃液など…
これらは幸い,研究機関が大半の面倒を見てくれていますが,この先どうなるか分かりません.
特に私の研究は新しい物質の合成ですから,なかなか危険なゴミも多いので,安全になるまで処理・浄化するのは結構大変なんです.

こうした研究費を,いかに獲得するのか?
次回は,その当たりを紹介できればと思います.

2 件のコメント:

  1. 高坂先生
    研究費に関する一連の投稿はたいへん興味深く読ませていただきました。以前にもお伝えしたかと思いますが、小生は完全完璧なる文科系(スペイン語)でありますので、このようなお話は、ある程度想像できますが、実際に解り易く解説していただきありがたいです。

    立派な個人会社、経営者のような印象ですね。
    やりたいことがはっきりしていて、それに傾ける人一倍の情熱がないと続くものではありませんね。

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    1. 中原さん

      まったく経営者ですよね.それも利益が安定しない職種です.任期もあるので,生活まで安定しません.

      あえて言うのであれば,スポーツ選手や芸能人,あるいは株のデイトレーダーが近いかも知れません.

      この「任期制」のせいで,私のような常勤の正規職員でも,クレジットカードや不動産,保険契約で「契約社員」扱いされそうになることすらあります.イマドキ,終身雇用の若手教員なんて滅多にいないのですが…

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