バイオマスモノマーを用いた主鎖生分解性ゴムの開発と機能化

髙坂泰弘
(信州大学繊維学部 テニュアトラック助教)

2016年10月22日土曜日

高坂研単独の初論文!(無料公開中)

独立して1年半が経ちましたが,このたび1期生の論文がweb公開されました.

Synthesis of Thermo-Responsive Polymer via Radical (Co)polymerization of N,N-Dimethyl-α-(hydroxymethyl)acrylamide with N,N-Diethylacrylamide

N,N-ジメチル-α-(ヒドロキシメチル)アクリルアミドとN,N-ジエチルアクリルアミドのラジカル(共)重合による温度応答性ポリマーの合成)

Yasuhiro Kohsaka, Yoshiaki Tanimoto

(Faculty of Textile Science and Engineering, Shinshu University)
Polymers 20168(10), 374; doi:10.3390/polym8100374
http://www.mdpi.com/2073-4360/8/10/374




低温では水に溶けるものの,ある温度を境に全く水に溶けなくなる新しい高分子を合成したという内容です.
実際はその性質自体は特段新しいものではなく,合成戦略に特徴があります.
従来,高分子を与えない(重合しない)と考えられていた原料(モノマー)をあえて合成,反応させました.
単独では重合しませんでしたが,類似の汎用モノマーと組み合わせた際に,既存の理屈から予想される以上に重合し,前述のような温度応答性を持つ高分子を与えた,という内容です.

実は当初の研究計画とだいぶ違った展開で論文化するに至りましたが,成果報告にはちょうどよい頃合いでもありました.
これ以上の内容を詰め込むと,焦点がぼけてしまうからです.

何はともあれ,独立して最初の論文です.次の論文の投稿も控えており,この勢いで頑張りたいと思います.


2016年10月15日土曜日

真空ラインで実験だぁ

研究室のホームページを更新するために写真を整理していましたが,ホームページの背景色と合わない,全体的に逆光で暗い,不敵な笑みを浮かべている,等の理由でボツになった写真がちらほら.

更新は無事に終わったものの,もったいないのでブログに掲載!


真空ラインで脱水トルエンの真空蒸留を終えたところの写真です.
実験中だとかなり雑然としていますが,稼働していない状態の真空ラインはこちら.


今週,来週はこんな感じで私自身も実験三昧です.
正直,自分で実験した方が確実なので,もっと実験したいのは山々ですが,ふだんは講義や会議,論文執筆,共同研究者との打合せや提携先への技術指導やらで,終日自由に実験できる日は稀です.

基本的には最初の3回目くらいまでやって見せて,後は学生に任せ,難しい場面や危険な実験,奇妙なデータが得られた場合に私がピンポイントで実験する生活です.
いかんせん,現在は7人,別働隊を入れると15人以上の大所帯ですから,致し方ありませんね.

とはいえ,こうして久しぶりに集中して終日実験できると,嬉しい限りです.



2016年10月5日水曜日

分子を規則的に並べて連結する方法を発見(論文紹介)

怒濤の9月が終了しました!
後半は出張ばかりでしたが,前半はとにかく大忙しでした.

そんな中,新しい論文が受理され,先日webにて無事に出版されました!


Synthesis of isotactic poly[α-(hydroxymethyl)acrylate] by anionic polymerization of the protected monomer

Y. Kohsaka, K. Yamamoto, K. Suzawa, T. Kitayama

Polym. Bull. in press (DOI: 10.1007/s00289-016-1813-1)


簡単に説明すると,水 (H2O) の部分構造でもあるヒドロキシ基 (OH基) を持つ分子A(下図参照)の反応についての報告です.


ここでは構造式の他に,分子模型も付けてみました.
この分子Aのなかで,C=Cと描かれた二重結合があります.今回は,この部分を反応させて,無数の分子Aを連結します.


従来の反応(ラジカル重合)では,分子Aが(上下)ランダムな方向で連結され,結果としてOH基の向きがバラバラになった高分子が生成します.

今回の論文では,OH基を一度別の形態に変換・処理することで,従来適用できなかった反応(アニオン重合)に成功しました.その後,OH基を再生する化学反応を施すことで,上図下のようにOH基の向きが揃った高分子が得られました.

当初の予測では,OH基の向きが高分子の特性に大きく影響すると踏んでいましたが,実際に合成してみると,それ以外の要因が強く物性に影響するようで,残念ながら従来法で合成した高分子と,今回の方法で得た高分子に大きな性質の差異はありませんでした.

しかしながら,新しい反応手法(アニオン重合)を適用した際に,既存の理論とは異なる反応結果が確認されました.詳細は割愛しますが,この結果がユニークだったので,今回論文にまとめた次第です.



このように,最終的な結果が当初の予測と異なることは,科学ではよくあることです.
それを「失敗」とか,
「役に立たないじゃないか」と批判する姿勢も大事ですが,

私たち科学者は「成果」として,

「なぜ予想外だったのか」
「最終結果はともかく,その過程で新発見はなかったか」

ということも大事にします.

それは,次の発見の足がかりになったり,
他の研究結果と比較して新発見を導いたりする種
になるからです.

その当たりの事情を理解して頂けると嬉しいのですが…