バイオマスモノマーを用いた主鎖生分解性ゴムの開発と機能化

髙坂泰弘
(信州大学繊維学部 テニュアトラック助教)

2016年10月5日水曜日

分子を規則的に並べて連結する方法を発見(論文紹介)

怒濤の9月が終了しました!
後半は出張ばかりでしたが,前半はとにかく大忙しでした.

そんな中,新しい論文が受理され,先日webにて無事に出版されました!


Synthesis of isotactic poly[α-(hydroxymethyl)acrylate] by anionic polymerization of the protected monomer

Y. Kohsaka, K. Yamamoto, K. Suzawa, T. Kitayama

Polym. Bull. in press (DOI: 10.1007/s00289-016-1813-1)


簡単に説明すると,水 (H2O) の部分構造でもあるヒドロキシ基 (OH基) を持つ分子A(下図参照)の反応についての報告です.


ここでは構造式の他に,分子模型も付けてみました.
この分子Aのなかで,C=Cと描かれた二重結合があります.今回は,この部分を反応させて,無数の分子Aを連結します.


従来の反応(ラジカル重合)では,分子Aが(上下)ランダムな方向で連結され,結果としてOH基の向きがバラバラになった高分子が生成します.

今回の論文では,OH基を一度別の形態に変換・処理することで,従来適用できなかった反応(アニオン重合)に成功しました.その後,OH基を再生する化学反応を施すことで,上図下のようにOH基の向きが揃った高分子が得られました.

当初の予測では,OH基の向きが高分子の特性に大きく影響すると踏んでいましたが,実際に合成してみると,それ以外の要因が強く物性に影響するようで,残念ながら従来法で合成した高分子と,今回の方法で得た高分子に大きな性質の差異はありませんでした.

しかしながら,新しい反応手法(アニオン重合)を適用した際に,既存の理論とは異なる反応結果が確認されました.詳細は割愛しますが,この結果がユニークだったので,今回論文にまとめた次第です.



このように,最終的な結果が当初の予測と異なることは,科学ではよくあることです.
それを「失敗」とか,
「役に立たないじゃないか」と批判する姿勢も大事ですが,

私たち科学者は「成果」として,

「なぜ予想外だったのか」
「最終結果はともかく,その過程で新発見はなかったか」

ということも大事にします.

それは,次の発見の足がかりになったり,
他の研究結果と比較して新発見を導いたりする種
になるからです.

その当たりの事情を理解して頂けると嬉しいのですが…





2 件のコメント:

  1. 返信
    1. セレンディピティーでもないんですよ.いちおう,この結果は予想はしていましたから.
      結果に価値を見出すか否かは,また別の問題ですが.

      削除