バイオマスモノマーを用いた主鎖生分解性ゴムの開発と機能化

髙坂泰弘
(信州大学繊維学部 テニュアトラック助教)

2016年11月29日火曜日

有機化学の講義

今日は講義の話題から.

私は大学教員ですので,研究はもちろん,講義も担当しています.
一年生向けの教養科目から,二年生,三年生向けの学生実験やガラス細工(!!),さらには専門科目である有機化学を教えています.

有機講義でいつも困るのが,実感のない机上の空論になってしまうこと.
例えば,水素化アルミニウムリチウムという試薬がありますが,使い方を誤るとこんなことになります…


いや~怖いですね.できれば使いたくないですね~.

化学反応とは,不安定な物質が安定な物質に変化する現象そのものですので,
ある意味水をかけると火を噴くことには不思議はありません.

とはいえ,やっぱり嫌ですよね~.

こういう実感があると,化学反応式を書くときに,

「間違っても水を入れちゃダメね.反応が終わったら,未反応物を安全に処理しないと…」

なんて感覚が身についたり,

新しい試薬が登場したときに,

「なんだ,あれ使わなくても済むんだ,便利ね~」

とか,なるんです.

たぶん,研究室に入ると有機化学がいっそう理解できるのは,
こういうことだと思うんですよね.

というわけで,私の講義では,
時間を見つけて実験のビデオを上映したりもします.

準備が毎回大変ですが…


2016年11月18日金曜日

再生700回を突破!

今年2月末に開催した,

やさしい化学セミナー 
高分子化学が拓く驚異の高機能材料 
~プラスチック・繊維・ゴムの最先端~

https://www.youtube.com/watch?v=M4U2i55Ev_Q

の記録映像の再生回数が700回を突破しました!
ありがとうございます.

90分もある超大作で,しかもマニアックな理系の講義の動画としては異例の再生回数です.
この調子で1000回を目指して頑張ります.

また,同様の出前講義をご希望の場合はメールにてご相談下さい.
研究が最優先なので確実に,とは言えませんが,善処したいと思います.

2016年11月12日土曜日

間違いなく,クリスタル

今日は研究室の日常の話題から.

学生の実験の進捗は毎日気がかりです.

近代哲学の祖であるデカルトは,
「我思う,故に我有り」の言葉で知られる,
方法的懐疑という理念を提唱しました.

科学者なら,自分で見たもの以外は信じるな,という意味です.
そんなこと言い出したら,チームで研究なんて,できなくなりますけどね.

実際,

同じ実験に毎日従事している学生の方が,
よい観察眼や直感を持っていたり

します.



私は恩師から

「この実験は自分が世界で一番詳しい」

と言えるまで実験するよう教えられましたが,まったくその通りです.

今年も新顔が入って半年近くが経過しましたが,
経験も積んで,だんだん頼もしい顔になってきました.


で,安心して研究成果を論文にまとめる作業をしていたら,
実験室から奇声が聞こえた後,ある学生が青ざめて部屋にやって来ました.

何でも,

「落としたがフラスコに入ってしまい,
水に不安定な物質が失活してしまった」

のではとのこと.

確かにその物質は水には不安定なんですが,
恐らく,水と混ぜても,すぐに失活するわけではないでしょう.
さらに運良く,水(液体)ではなく氷(固体)を入れたこと,
その物質が水と混ざらない油に溶けていたことから,

私は自信を持って,

「大丈夫だよ」

と声をかけることができました.

これは自分の判断で実験を諦めず,
私に報告してきた学生のファインプレー!

ビジネスでもホウレンソウ(報告・連絡・相談)が大事ですが,
これは研究現場でも変わりません.

その翌日,その実験がどうなったか報告を待っていると,

「先生,見て下さい!」



と,差し出されたフラスコには綺麗な針状結晶が!


春に同じ物質を合成した際のデータを見ても,
結晶の形状,融点,クロマトグラフィーの結果など全てが一致しています.

後は,真空乾燥してからスペクトルデータを取って分子構造が確定しますが,
ほぼ間違いなく成功したでしょう.

ちなみに,

この物質,世界でこれが2回目の合成例

です.もちろん,

この春に同じ学生が合成したのが世界初

です.

つまり,

世界でもこのフラスコの中にしかない物質

です!

これが結構面白い性質を持っているので,
今度の学会で報告するのが楽しみです.

これだから研究はやめられません.




2016年11月10日木曜日

避難訓練

今日は大学の避難訓練でした.

化学系の研究室では,火災の原因になる薬品を何種類も取り合う買うので,工場やガソリンスタンドと同じように,いろいろなところに気をつけています.

研究室には消火器・消火砂を常備していますし,消火器の種類にも注意しています.

一般的な赤い消火器は水を放出しますが,有機化学の研究では油が実験の主な対象ですし,時には水と触れると急速に反応して発火する物質すら扱います.
こうした物質に放水すると,事態が返って悪化しかねません.

また,実験には高価な専門機器を使うので,放水でこれらが故障した場合,被害額がとんでもないことになります.

そんなわけで,主に二酸化炭素系の緑の消火器や,ハロゲン系消火剤の灰色の消火器を使います.どれらを使うのかは燃えている対象など状況によるので,いざというときには咄嗟の判断が求められます.

かなり昔の話ですが,実際に消火器を使ったことがあります.
そのときは意外と冷静に対処できましたが,実は仕事がら,消防法について頭にたたき込んでいたことと,子供の頃に防災館で練習した経験が活きたのかなぁと思います.

消火器のみならず,AEDの使い方や緊急避難路の場所など,こうした訓練のときに確認すると,いざというとき必ず役に立ちます.
研究者だけでなく,皆さんもこの機会に是非確認して,万が一の時に備えて下さい.

これから乾燥しますし,くれぐれも火にはご用心を!

2016年11月4日金曜日

ノーベル化学賞!!

本年度のノーベル生理学賞は,私の母校の大隅先生が受賞されました.
おめでとうございます.

私が子供の頃はノーベル賞なんて大江健三郎氏くらいで,子供には全く理解できない世界でした.それが,ここ最近は毎年のように受賞が続いていて,子供たちによい刺激になればと思います.
かく云う私も,高校1年生のときに白川英樹先生がノーベル化学賞受賞を受賞され,高分子化学に興味を持ったことがきっかけで,現在に至っています.

さて,日本はノーベル生理学賞で大騒ぎですが,私はノーベル化学賞のニュースで心底びっくり仰天しました.なぜなら,受賞されたお三方はよく知っている研究者で,何回かお話ししたこともあったからです.

受賞の理由は「分子マシンの発明」.
その詳細はこちらのNatureダイジェスト(日本語版)の記事(一般向け)や,有機化学美術館の記事(理系向け)のこちらこちら,あるいはこちらをご参照下さい.

実は私もこの分野には縁があり,博士時代の研究は,

分子マシンを高分子(巨大分子)に組み込み,
外部刺激で大変形させる技術の開発と応用

といった内容でした.

要は,収納式の物干し竿や突っ張り棒のように,「ネジ」「滑車」等を組み込んで変形できるような高分子を作れば,変形とともに性質まで変化しますよ~という研究です.
実際に,加熱するとゲル(ゼリー)から溶液状に変化する素材を開発したりしました.

この分野では日本でも著名な先生が多数おり,日本人としてはかなり残念な結果です.
とはいえ,同時に身近な研究者(といっても論文を熟読しているレベルで,実際にお目にかかった機会は数える程度ですが)がノーベル賞を受賞するという,人生でも滅多にない経験をしました.実は,私の現在の専門分野の先生が受賞するだろうと思っていたので,この展開には度肝を抜かれた次第です.

思えば,「この分野からノーベル賞は絶対出る!」と直感して恩師の研究室の門を叩いたのですが,その頃の直感はすっかり忘れていたので,いざこうした展開になると開いた口がふさがりません…いやはや.

最後に改めまして,ご受賞おめでとうございます!