バイオマスモノマーを用いた主鎖生分解性ゴムの開発と機能化

髙坂泰弘
(信州大学繊維学部 テニュアトラック助教)

2016年11月12日土曜日

間違いなく,クリスタル

今日は研究室の日常の話題から.

学生の実験の進捗は毎日気がかりです.

近代哲学の祖であるデカルトは,
「我思う,故に我有り」の言葉で知られる,
方法的懐疑という理念を提唱しました.

科学者なら,自分で見たもの以外は信じるな,という意味です.
そんなこと言い出したら,チームで研究なんて,できなくなりますけどね.

実際,

同じ実験に毎日従事している学生の方が,
よい観察眼や直感を持っていたり

します.



私は恩師から

「この実験は自分が世界で一番詳しい」

と言えるまで実験するよう教えられましたが,まったくその通りです.

今年も新顔が入って半年近くが経過しましたが,
経験も積んで,だんだん頼もしい顔になってきました.


で,安心して研究成果を論文にまとめる作業をしていたら,
実験室から奇声が聞こえた後,ある学生が青ざめて部屋にやって来ました.

何でも,

「落としたがフラスコに入ってしまい,
水に不安定な物質が失活してしまった」

のではとのこと.

確かにその物質は水には不安定なんですが,
恐らく,水と混ぜても,すぐに失活するわけではないでしょう.
さらに運良く,水(液体)ではなく氷(固体)を入れたこと,
その物質が水と混ざらない油に溶けていたことから,

私は自信を持って,

「大丈夫だよ」

と声をかけることができました.

これは自分の判断で実験を諦めず,
私に報告してきた学生のファインプレー!

ビジネスでもホウレンソウ(報告・連絡・相談)が大事ですが,
これは研究現場でも変わりません.

その翌日,その実験がどうなったか報告を待っていると,

「先生,見て下さい!」



と,差し出されたフラスコには綺麗な針状結晶が!


春に同じ物質を合成した際のデータを見ても,
結晶の形状,融点,クロマトグラフィーの結果など全てが一致しています.

後は,真空乾燥してからスペクトルデータを取って分子構造が確定しますが,
ほぼ間違いなく成功したでしょう.

ちなみに,

この物質,世界でこれが2回目の合成例

です.もちろん,

この春に同じ学生が合成したのが世界初

です.

つまり,

世界でもこのフラスコの中にしかない物質

です!

これが結構面白い性質を持っているので,
今度の学会で報告するのが楽しみです.

これだから研究はやめられません.




3 件のコメント:

  1. セレンディピティーーーーー!!!

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  2. 中原さん

    申し訳ないのですが,これは私の予想通りなのでセレンディピティーではありません.

    学生のミスにただ適切な応急処置を施しただけです.

    セレンディピティーも大事ですが,期待値の大きい青写真を描いて,その通りに成果を出すことはもっと大事です.
    偶然にばかり頼っていると,それこそ科学者は何をやっているのだ,と言う話になってしまいますし.


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  3. あらら、、そういうことでしたか。。
    早とちりしてました。
    Jumping to the conclusion!

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