バイオマスモノマーを用いた主鎖生分解性ゴムの開発と機能化

髙坂泰弘
(信州大学繊維学部 テニュアトラック助教)

2017年12月28日木曜日

(更新)「新進気鋭の研究者」として招待論文が公開!

年の締めくくりに,嬉しいお知らせです.

Polymer Chemistry誌に,研究成果が論文として掲載されました.

今回はなんと,'Emerging Investigators'(新進気鋭の研究者)としての招待論文で,私の略歴も掲載される予定です!
この雑誌は高分子化学では最高峰の雑誌ですので,大変驚くと同時に,心から感謝しております.


Conjugate substitution and addition of α-substituted acrylate: A highly efficient, facile, convenient, and versatile approach to fabricate degradable polymers by dynamic covalent chemistry

Yasuhiro Kohsaka, Takumi Miyazaki, Keito Hagiwara

http://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2017/py/c7py02114c#!divAbstract


ここにたどり着くまで,あんなことこんなこと,大変な苦労がありました.
年内に決着が付いて,本当に安心しました.

(2017年12月28日追記)
論文の内容について,追記します.

なお,この研究成果についての特許は私が押さえておりますが,
出願こそしたものの,審査に回すかも含めて全く見通しが立っていません.
現在,提携先(企業)を募集しておりますので,ご興味があればご連絡下さい.

さて,内容ですが,

私が最近注目している「共役置換反応」という化学反応を利用して,
化学的に分解可能な高分子を合成した,

という,非常にマニアックな研究です.

以前の研究でも,
「共役置換反応」は高分子合成において優れた化学反応である
ということを報告しておりました.

しかしながら,
この研究では「共役置換反応」に加えて,
「共役付加反応」という全く別の化学反応を組み合わせていたため,

反応の適用範囲はジチオールという試薬のみ,
しかも特定の触媒,溶媒を使用しなければ高分子にならない,

という大きな制約がありました.

今回の新技術では,「共役置換反応」のみで高分子を合成しているため,
ジチオールのほか,ジカルボン酸,ビスフェノール,モノアミンなど,
様々なタイプの試薬を原料に高分子を合成することができます.

さらに,
一部の例外を除き,反応条件の制約がない(適当に実験しても成功する),
という,大きな改善点がありました.

で,この論文にはさらに続きがあります.

「共役置換反応」で合成した高分子ですが,
なんと,同じ「共役置換反応」で分解することができます.

一見すると????という現象ですが,
いままで,反応基Xと反応基Yを両手に持つ分子をn個ずつ組み合わせて,

n X-A-X + n Y-B-Y -----> --(XAXB)n-- + nY

という様式(重縮合)で分子を繋いでいたところに,
反応基Yを片手にしか持たない別の分子CYを反応させると,

--(XAXB)n-- + CY  -----> CXAXC + BY

Cが割り込んで,分子が分解します…う~ん,やっぱり難しいですね.

何にせよ,

「合成に使ったのと全く同じ反応で分解をする」

なんて発想,
なかなか珍しいのではないでしょうか.

これ,実は全く別のことを狙っていて,
学生に実験させたら,

学生「先生,高分子が改質するどころか,粉々に分解してしまいました(泣)」

という報告があり,

私「おぉ,それは面白い!」
私「最初から分解する計画だったことにして論文を書こう!」
私「その方が意外な発見だし,頭良さそうじゃないか」

学生「…😕」

というセレンディピティーから生まれた研究です.

まぁ,何事も結果オーライと言うことで,めでたしめでたし.

2017年12月25日月曜日

祝!閲覧30,000回(実は31,000回)突破

このブログの閲覧回数が30,000回を超えました.
実は12月上旬には超えていたのですが,忙しかったり論文など先に公開すべき情報があったりで,やっとご報告という次第です.

これからもどうぞ宜しくお願いします.

研究成果が報道されました

先週の論文に関する記事が,12月15日付で化学工業日報の1面トップ記事を飾りました!

著作権の問題もあるのでここには表示できませんが,
インターネットでもハイライト部分のみ閲覧可能です.
http://www.kagakukogyonippo.com/headline/2017/12/15-32091.html

どうもありがとうございました.

2017年12月13日水曜日

(論文紹介)金属もハロゲンも用いない安全・安心なポリエステル合成

この度,イハラニッケイ化学工業株式会社との共同でChemistry Letters誌に研究成果を発表しました.
今回は2つ目の論文の紹介です.


Bifunctional Acyl-1,2,4-triazole: An Alternative Monomer of Dicarbonyl Chloride for Metal- and Halogen-Free Polyester Synthesis

Y. Kohsaka,*1 K. Homma,1 I. Mori,S. Sugiyama,2 Y. Kimura2
(1信州大学繊維学部, 2イハラニッケイ化学工業株式会社)
Chemistry Letters, in press (https://doi.org/10.1246/cl.171098)




ポリエステルは,繊維材料やPETボトルはもちろん,自動車部品,電子素子など様々な分野で利用される高分子です.

工業的には,主にエステル交換法という手法でポリエステルを合成しています.
この方法では分子量が大きいポリエステルが生成するという利点がありますが,
200度~300度程度の高温,真空下で反応を行うため,エネルギー負荷が大きいという欠点がありました.

また,反応にはチタン化合物などの金属触媒を用いるのですが,
金属触媒がポリエステル中に残存しやすいという問題がありました.
残留金属はごく微量ですが,半導体など電子材料には悪影響を及ぼしかねませんし,
このようなポリエステルを食品容器に使用することに批判的な意見も出ているようです.

ポリエステルは,ジカルボン酸クロリドからも合成が可能です.
この反応は低温,常圧で実施できる利点がありますが,
強酸性・強毒性の塩化水素が発生するため,
何らかの方法で塩化水素を処理する必要があります.
このため,酸クロリド法は実験室など小スケールでの合成が主でした.

今回の研究では,以前の論文で報告したアシルトリアゾールによるエステル化反応がポリエステル合成にも有効であることを見出しました.

金属触媒もハロゲン(塩素)原子も用いないこの手法は,
上述のような諸問題を解決に繋がります.
また,100度以下の低温でも重合が達成され,エネルギー負荷も小さくなりました.

さて,私は高分子合成が専門ですが,信州大に着任する前は,
主にアクリルモノマーや精密アニオン重合が研究対象でした.

今回はアクリルでもアニオン重合でもないので,
前回に引き続き,またまた未経験の分野での論文となります.

では全くの素人かというと,実は学生時代にポリ炭酸エステルの合成に関する実用化研究をお手伝いしていまして,多少の知識や経験はあったのです.
当時は渋々やっていた研究でしたが,こうしてあの頃の知識が役に立つのですから,不思議なものです.

(論文紹介)酸クロリドに匹敵する高速エステル化反応の開発

この度,イハラニッケイ化学工業株式会社との共同でChemistry Letters誌に研究成果を発表しました.


Esterification with Aromatic Acyl-1,2,4-triazole Catalyzed by Weak Base at the Rate Comparable to Acyl Chloride

Y. Kohsaka,*1 K. Homma,1 S. Sugiyama,2 Y. Kimura2
(1信州大学繊維学部, 2イハラニッケイ化学工業株式会社)
Chemistry Letters, in press (https://doi.org/10.1246/cl.170975)




簡単に言うと,

安全かつ高速でエステルを合成する化学反応を見つけましたよ,

という内容です.

原料となるのは,タイトルにもあるアシルトリアゾールという試薬.
もともと,アシルトリアゾールを用いたポリエステル合成の研究を進めていたのですが,
研究の早い段階から,

「まずは基本となる化学反応についてもキチンと調べておきましょう」

と,提案をしました.

アシルトリアゾールのエステル化反応は古くから知られていたのですが,
困ったことに,標準的な手法は高分子合成に適用しにくい状況でした.
そこで,高分子合成に特化して反応をカスタマイズする必要が生じたんです.

研究の結果,

適切な触媒の存在下では,
アシルトリアゾールがカルボン酸塩化物を凌駕する速度でエステルを与える

ことを見出しました.

「触媒をうまく選択すれば,反応速度は改善する」

とは予想していましたが,
まさか最強と言われる酸塩化物を超える結果が生じるとは思ってもいませんでした.

論文では,反応速度の測定から,反応メカニズムの解釈,分子構造と反応性の相関など,かなり細かい議論をしています.

つまり,ぜんぶ有機化学に関する内容です.

私は高分子化学が専門ですので,
まさかこんな論文を書く日が来るとは思ってもいませんでした.

今回の論文は自分にとっても未踏領域でしたので,
非常によい経験となりました.

きっかけを作って下さった,
イハラニッケイ化学工業株式会社ならびに共著者の皆様に心より感謝申し上げます.




2017年11月25日土曜日

第28回エラストマー討論会で講演(英語)します

今週は第28回エラストマー討論会にて依頼講演です.


一般社団法人 日本ゴム協会
第28回エラストマー討論会
2017年11月29日,30日
京都大学宇治キャンパス
https://srij-meeting.wixsite.com/elastomer-symp-j/blank-5


英語40分は,私自身もアメリカ留学以来ですので(去年のハンガリーでの招待講演は30分),けっこうな大イベントです.
実はその翌日にも某所で90分の招待講演(質疑応答30分含む)があり,頑張らないといけません.

ということで,当面は更新できないと思われますから,よろしくお願いします.

ラボ改造!劇的ビフォーアフター!!

先日の記事でも書きましたが,学生数の増加に伴い,いよいよ研究室が手狭になってきました.

そこで,先月から研究資金を一気に投下し,ラボの大改造を進めています.
正直,これだけの資金投下をするのは久しぶりなので(と,いいながらも,立ち上げ以来,毎年のような気もしますが・・・),注文手続きを進める際にはかなり緊張しました.

いま,研究室の改造が進みつつありますので,少し見てみましょう.


立ち上げ時は,こんな感じで1基だけ,こじんまりとあったロータリーエバポレーター(減圧濃縮器)ですが,


学生の皆さんと共に,解体工事を進めて(いつの間にか2基に増えている),


窓際に新設した実験台に移動しました!
今度はパーツ入れも充実していて,少ないスペースに機能が集約されています.
また,ドラフト(局所排気装置)の近くに移ったので,排気ガスの誘導がしやすく,以前よりも一層安全な方向に改善しました.


そのドラフト,これも1基しかありませんでしたが,フル回転しても人数的に苦しい状況でした.
というより,有毒ガスを発生しない実験を中心に研究計画を立案する必要があったのですが,これでは研究に対する制約が大きく,海外の研究者から,
「なぜここまで発見しておいて,この実験をしないのか」
と言われた際に,閉口せざるを得なかったんです.

そこで,


このたび,念願のドラフト増設と相成りました.
スペース的にもう1基入れられそうでしたので,いずれ研究費に余裕が出れば,さらなる増設も検討したいと思います.


ゴミも,このように集約して管理できるようになりました.
また,この写真の右端に見切れていますが,液体窒素保管器も増設しました.
本学部には液体窒素タンクがないため,使い果たすと保管器を業者に引き渡し,再び納品されるまでの2,3日は液体窒素なしで実験せざるを得ません.

これまで,ドライアイス発生装置で細々と頑張ってきましたが,やはり効率の低下は防ぎきれず,思い切って10万円を投資して,液体窒素保存容器の追加購入に踏み切りました.

今度は改造により空いた実験スペースの再構築と,学生室・教員室の改造が始まります!

2017年11月17日金曜日

秋田大学で招待講演

日本化学会東北支部にご招待頂き,秋田大学に来ています.
私の一族は秋田県出身なので,小さい頃から何かと秋田には縁があり,今回の訪問も非常に楽しみにしていました.

上田駅から秋田駅までは,新幹線を乗り継いで4時間超です.
途中,仙台,盛岡,田沢湖,角館,大曲と魅力的な観光地を通りますが,今回は仕事なのでもちろん立ち寄ることはできません.

新幹線に乗った頃は朝ご飯の時間でしたが,
到着した頃には昼食の時間をとうに過ぎていました.

そんなわけで,まずは腹ごしらえ.


有名な佐藤養助の稲庭うどんです.
うどんは数あれ,私はこれが一番好きです.

そこから秋田大学へ.
初めての街は徒歩で歩け,が私の信条ですので,歩きます.

が,恐ろしく何もない・・・

どうも繁華街は駅の反対側らしく,このあたりは住宅地.
目印がないので,スマホの案内がなければ心細かったことでしょう.

また,ふだん山に囲まれて過ごしているので,こうも空が広い平野は不慣れです.
特にこの日は初雪で,盆地民には新鮮な北風が冷たかったです.

そうこうしている間に,到着しました!


そのまんまの名前の交差点です.
そういえば,うちの大学の近くの交差点も「信大繊維学部入口」でしたね.



広い!
いや,キャンパスとしては普通なんですが,日頃上田キャンパスという繊維学部しかない職場にいるので,総合キャンパスの広さに驚きます.
まぁ,1学部だけにしては,むしろ上田キャンパスは広いのですが・・・

この日は会場の下見と,今回お呼び頂いた松本先生,寺境先生にご挨拶するのが主目的です.いかんせん移動に最速で4時間超,往復で10時間ですから,前泊しないと本当に私の講演の1時間だけの滞在になりかねません.

松本先生は私の大学の3学年上の先輩で,学生実験でTAをして頂いて以来,何かと可愛がって下さる大恩人です.
研究室が違えど,先輩,同輩,後輩でこうした関係が続けられるのが,母校のよいところだと思います.

さて,夜は秋田の郷土料理でお持てなし頂きました.
なまはげが乱入して大騒ぎ!

・・・となるはずが,やたらと恐縮するなまはげ.
中の人,もしかして秋田大学の学生さん?

そして夜が明け,今朝のご飯も,秋田づくしでした.


左上から時計回りに,ハタハタの佃煮,いぶりがっこ,きりたんぽ鍋,稲庭うどん,あきたこまち,とろろ の とんぶり がけ,です.

冒頭でも書きましたが,父は北秋田の出身.
男鹿半島名物のハタハタはほとんど食べたことがなかったのですが,それ以外は子供の頃から馴染みの深い食事です.秋田と言えば,あとジュンサイ,比内地鶏でしょうか.

こうして英気も養ったので,講演を頑張ろうと思います!

2017年11月14日火曜日

研究室を大改造!

某テレビ番組じゃないですが,研究室を劇的に改造中です.

設立初年度こそ教員1名,学生3名の少人数スタートでしたが,
研究室はいまや11名の大所帯.
来年度はもっと大変で,単純計算で12~13名に増加する見込みです.

こうなると,実験室,学生室ともども,手狭になってしまいます.
ドラフト(局所排気装置/有毒ガスを吸引する装置)も既存の1基では足りなくなり,
このたび1基を増設することになりました.

研究室に割り当てられたスペースは変わりませんので,
いかにデッドスペースを作らないかが,大きな鍵になります.
入居時から鎮座している大型什器を必要最低限まで断捨離し,
無駄なスペースを徹底的に排除するしかありません.

というわけで,これから研究室の雰囲気が大きく変わりますので,
折を見て写真で報告できればと思います.

しかし・・・ものすごい出費です.
ドラフトはともかく,実験台の増設,事務机の追加購入(検討中)などトンデモナイ金額になります.
今年は研究費に余裕があったのですが,どうも雲行きが怪しくなってきました・・・

2017年11月12日日曜日

日本化学会東北支部で講演します!

秋田大学・松本和也先生のご厚誼により,11月17日(金)に以下の学会で講演することになりました.
参加費無料だそうですので,皆様奮ってご参加下さい.

平成29年度日本化学会 東北支部秋田地区講演会

主 催 日本化学会東北支部
会 期 11月17日(金)15時~17時15分
会 場 秋田大学総合研究棟1階講義室(秋田市手形学園町1-1 秋田大学手形キャンパス内)〔交通〕JR「秋田」駅東口より徒歩10分
参加申込締切 事前申込み不要
1.α-置換アクリル酸エステルの反応性に着目した機能高分子の精密合成(信州大繊維)髙坂泰弘
2.分子構造制御に基づく新奇なπ電子系化合物の創製と機能創発(山形大院理工)片桐洋史
参加費 無料
参加申込方法 事前申込み不要

防衛大学校で招待講演

9月末から大忙しで,更新も滞ってしまいましたが,
その忙しさは11月には行ってますます苛烈を極めて参りました.

ここまでを振り返ると,
ロンドンからパリ経由で帰国後,翌日すぐに1泊2日で研究室旅行へ.

それから後期の講義が始まり,11月には学生実験も始まりました.
この実験ですが,以前にも紹介したように私のオリジナル教程です.
(※教程としてはオリジナルですが,当然実験としては既に確立された内容です.)

この間の10月27日に,防衛大学校で講演して参りました.
これは,古い友人で大学院の同期でもある林正太郎先生の尽力によるものです.

講義は一般の大学で言う,2年生~大学院生に相当する学生相手だったので,結構悩みました.
いかんせん,どの知識レベルに合わせて,どんな内容を講演すればよいか.
例えば,私はいま2年生と3年生の講義を担当していますが,彼らと同じ知識レベルだとしたら,到底研究の内容なんて理解できないでしょう.

この場合,レベルを一気に下げて話すのも一案ですが,それではわざわざ私が出向して講釈する必要はないでしょう.
と,さんざん悩んで,以下の方針で講演しました.


  1. 研究の裏話をする.どんなきっかけから始まったのか,何を考え,何に直面したのか.
  2. 研究については,本気で話す.但し,同じ研究分野(高分子化学)の人にしか通じない大学院レベルの専門用語や,細かい原理,データは省略して,面白い部分に重点を置く
1は,学部生を意識したものです.

通常の学会では,どれだけ紆余曲折があっても,「すべて計画通りだ!」といった態度で話します.
そうしないと,論理構成が一貫しませんし,何より時間の浪費です.

一方,今回は学部生が主な聴衆なので,研究の経緯を詳しく話して,リアリティを持たせると同時に,今後学生に起こるであろう状況を伝えようとしました.

2も,大学での講義ならではです.
同業者が集まって,研究結果について討論する学会ではないので,とにかく面白さを重視して話しました.

結果的に,話が散逸してしまって,一貫性のある主張ができたかどうかは怪しいものでしたが・・・

幸い,学生さんはかなり熱心に聞いて下さっただけでなく,質問も時間いっぱいまでぶつけてくれました.
これには心からいたく感心しまして,授業料を払って受講する大学と,給料を貰いながら職務として勉強する大学校の違いを意識せざるを得ませんでした.
それとも,よく訓練された自衛隊だからかな?

何にせよ,すばらしい経験になりました!







2017年10月4日水曜日

イギリス出張7日目 ~晩餐会~

イオン重合国際会議に参加するため,イギリスに来ていました.
過去形なのは,もう帰国してしまって,旅を振り返る暇すらほとんどないからです.

さて・・・前回は晩餐会前の休憩期間に更新したはずです.
晩餐会,いわゆるBanquetについては,過去記事をご参照下さい.


会場はここ,ダラム城です.古城で領主様のごとく,宴会ができるという趣向です.


会場はこんな感じの大広間です.
この後,写真に写っているフランス人,ドイツ人,韓国人とテーブルをシェアして,国際的な雰囲気の中で食事を摂ることになりました.

皆さん私の講演を覚えていて下さって,この場で研究談義.
そこから,両隣のフランス人とはお互いの文化紹介になり,

私「アルセーヌ・ルパンの話はよく読んだよ」
フランス人「あれはフランスじゃ若者の登竜門だね,奇岩城を見に行くとよいよ!」
私「ところでルパン3世って知ってる?」
フランス人「あれねー,カッコイイし大爆笑だよね」

私 (゚Д゚)

お料理はこんな感じです.


ここでフランス人と仲良くなったことが,後で重要な結果をもたらしたのですが,それは後日.

さて,大陸側の晩餐会は日付が変わっても続き,最後はみんなでダンシングするのですが,今回は特段何もなく22時には終了.

さすがに飲み足りない!となってフランス人,ドイツ人とは併設のバーで24時過ぎまで飲み明かしました.
が,この頃になってくると私も疲れ初め,韓国人を含めたアジア人組は先にリタイアすることになりました.

毎回,ヨーロッパ人は朝方まで飲むんですが,その体力に毎回驚かされます・・・



あたりはすっかり夜も更けて,真っ暗です.
こんな深夜に海外の街を30分も歩いて宿に帰るんですから,ちょっと怖いですね.

幸い,ここは田舎だったので,特段問題もなく床につくことができました.

明日はいよいよ最終日です.

2017年9月22日金曜日

イギリス出張4~6日目 ~学会とハリー・ポッター~

イオン重合国際会議に参加するため,イギリスはダラムに来ています.


DURHAMでダラムです,スペルが難しいですね.
ここは長らく司教が治めていた街だそうで,大聖堂の紫の十字架が街のシンボルです.
例えば,学会初日のWelcome Receptionで振る舞われたビールも,こんな感じです.


さて,前回,大反響のうちに講演が終わったことを書きました.
国内の学会では他人の研究にあれこれ言う文化はほとんどないので,
こうして率直な感想や質問をぶつけて貰えると嬉しい限りです.

こうして迎えた3日目の朝です.
前日の講演のお陰か,Coffee Break(休憩)では沢山の研究者にお声がけ頂きました.
この国際会議は初参加から4年目,通算3回目になりますが,だんだん顔と名前を覚えて下さっている方が増えているようで,私から声をかけても,「どちら様?」ではなく,「やぁ,元気だったかい?」と周囲の反応が大きく変わってきました.

中には,せっかく会えたのだから写真を撮っておこう,なんて提案して下さる方もおり,ただただ嬉しかったです.
学生・ポスドクを除いた,いわゆるProfessorの中では私は最年少ですので,ただただ恐縮ですね.

こうして人脈作りにも大きな成果があり,また国際共同研究の打合せもできました.
学術論文の審査に関しても,心強い味方ができたようです.

研究では,流行にとらわれず長い目線で独自の研究を進めている方が多く,先日のベルギーの学会とは対照的でした.
私も頑固に合成研究だけを進めていますので,今後の研究方針を考える上で,先達の歩みは大いに参考になります.

この日は,ポスター発表もありました.


会場は歴史ある商工会議所で,厳かな空間で研究発表します.
が,実際はワインを片手に研究について語るので,国内の学会以上にフランクな雰囲気です.ここでは,前職での私の教え子も発表しました.

このときもいろいろな方から私の研究についての問い合わせや感想を頂き,ありがたい限りです.

4日目は,午後から会議公式行事のExcursion(遠足)です.
このイベントについては,2年前に詳しく書いたのでそちらを参照して下さい.


ダラムからバスで揺られて1時間,アニック城に来ました.
ハリー・ポッターのクィディッチのシーンで有名な場所です.


このお城,イギリスでは英国王室の別荘であるウィンザー城に次いで大きい城だそうですが,ノーサンバーランド公爵パーシー一家が今でも住んでいるそうで,内部撮影は禁止でした.

もちろん生活空間は別にあるんでしょうが,全く使っていないわけでもなく,実際,図書室には日本でもおなじみの酒類が並ぶなど,一部に生活感が垣間見えました.

5日目は,ふつうに学会です.
ここへ来て会議で提供されるランチに,初めてローストビーフが登場しました.
写真,右手奥のマスタードとオニオンの下にあります.


これで,フィッシュアンドチップス,ローストビーフ,シェパーズパイを食べたことになります.

昼休みは1時間30分もあるので,ダラム大聖堂を見学しました.
実は日曜日はミサで一部しか観られなかったんです.

ここも,ハリー・ポッターのロケ地です.


さて,午後の講演後2時間の休憩を経て,これから古城で晩餐会です.






2017年9月19日火曜日

イギリス出張4日目 ~講演~

イオン重合国際会議に参加するため,イギリスはダラム大学に来ています.

今日から会議も本格的にスタート.
冒頭でこの会議の経緯や目的について,発起人の一人であるProf. Yagci(トルコ)から説明がありました.

国際会議と言っても堅苦しいものではなく,大半はジーンズにスニーカーで参加しています.
時々冗談も飛び交うので,先に紹介したProf. Yagciが「何なら歌でも歌おうか?」なんて言えば,主催者のProf. Hatchings(イギリス)が「時間があれば考えてもいいよ(当然,そんな時間なんてない)」と返して笑いを取ったりしていました.

さて,そんな国際会議ですが,私も旧知の研究者と会話ができて楽しかったです.
特に昨晩到着した方々は,昨日のWelcome Receptionには出席していなかったので,今日初めて会えた,なんて方もいました.

今日はまた,私の講演の日でもありました.
写真を撮るわけにはいかないので,スライドのトップページで我慢して下さい.


講演への評価は,終わった直後にわかります.
今日1日観ていてもそうでしたが,聴衆が関心を抱いた場合は質問が相次ぎ,また質問の前に感想を述べたりもします.
一方で,全く質問が出ない講演もあり,特に(招待講演ではなく)一般講演となると,その傾向が強くなります.

で,私は一般講演です.
これまで若手講演でしたから,こ,これでも結構な進歩なんですよ!
しかし,大丈夫でしょうか・・・

結論から行くと,英語の善し悪しはともかく,評判は上々でした.
質問はこの分野の大御所と討論した時点で時間切れとなってしまいましたが,
この大御所の先生から「面白くて素晴らしい戦略だね」とのお言葉.

講演終了後も,帰り道で出会った沢山の方から「面白い」「その発想はなかった」「やるじゃん」とのコメントを頂き,意見交換をしました.
実は昨年,ハンガリーで開かれた国際会議で既に同じ講演をしていて,およそ3割程度は同じメンバーだったので,特段のコメントもないかと思っていました.
いやー,これだけ反響がよいと,研究者冥利に尽きるというものです.

このテーマ,結果が揃ってきたので,このまま完結とするか,続けようか迷っていましたが,少なくとももう2,3年は続けた方が良さそうですね.

実は,嬉しかったことがもう1つ.
この講演の直前のCoffee Breakでブラックコーヒーを淹れていたら,
見知らぬ研究者が近寄ってきて,

「あんた,Dr. Kohsakaだろ,この前の論文を読んだよ.
前の研究の頃から注目していたんだけど,この前の論文は全く違うアイディアだろ!
しかも,あれ,かなりcoolだったよ.次作はいつ出るのかい?
うちの研究室じゃ,これスゲー研究になるって話題なのよ」

と興奮気味に話してくれました.

初めはこれは煽てて研究の様子を探っているのかな?とも思いましたが,
話すとかなり細かいデータまで覚えていてくれて,その場でディスカッションに.
どうやら本当に議論したかったらしい…

この論文,発表してすぐに(私の中で)伝説的な研究者からメールを頂いたり
私が思っている以上に好きな人には受けるらしいです.

私としては,今回の学会は国際的な人脈作りが目的でしたので,
こうして色々な国の方に覚えて頂けると嬉しい限りです.
毎年,ヨーロッパに足を運んでいますが,同じ地域に定期的に顔を出すと,こうして認知して頂けるので嬉しいですね.

今日は講演後,ホテルまでのシャトルバスの発車時間までに余裕がなく,皆さん駆け足でコメントだけ残して去って行きましたが,明日のCoffee Breakでまたお話しできることでしょう.

そして,明日はいよいよ国際共同研究に関する打合せです.
先方曰く,

「早く准教授になってくれ!(助教の職位では研究費の申請資格や採択率に問題あり)」

はい,頑張ります・・・


2017年9月18日月曜日

イギリス出張 3日目 ~学会が始まる~

イギリス出張3日目,いよいよ学会が始まりました.

今日はWelcome Receptionだけなので,参加者に挨拶をするだけですが,
旧知の研究者に会えることは非常に嬉しいですね.

今回は私の教え子も研究者として参加していて,2年ぶりに会うことができました.
彼はいまサウジアラビアでポスドクとして活躍しているとのことです.

残念ながら,写真はありません....
こうした場で決まって記念撮影をするのは,日本人だけでしょうね.

明日はいよいよ講演です.
まさか初日に講演するとは思ってもいませんでしたが,すぐに気楽に過ごせるようになるので,かなりありがたいですね.




2017年9月17日日曜日

イギリス出張2日目(番外編)~ロンドン弾丸ツアー~

イオン重合国際会議に参加するため,イギリスはダラムに来ています.
前の記事でも書きましたが,初日は深夜着のためロンドンで一泊し,2日目は電車で3時間かけて学会会場のダラムへ移動するだけです.

当初,17時までに来ないと宿(今回は大学のゲストハウス)の受付が閉まるぞ,と警告を受けていたのですが,17時を過ぎても当直が対応してくれることになり,時間に余裕ができました.

そこで,せっかくの休日(土曜日)ですので,朝9時から電車が発車する15時まで,6時間だけのロンドン弾丸ツアーを企画しました.

ベーカー街ピカデリー・サーカスバッキンガム宮殿大英博物館を6時間で回ります!!

時間に限りがあるので,7時頃には宿を出たかったのですが,朝食が7時30分からで,ゆっくりと調理されていたため出発が9時になってしまいました.
後で学会会場でわかったのですが,この国では朝8時~9時が標準的な朝食タイムのようです.

キングスクロス駅の荷物預かり所にスーツケースを預けて,地下鉄でベーカー街へ.
目指すはもちろん,Baker Street 221Bです.



シャーロックホームズ博物館は他より早い9時30分開館なので,第1目標にしました.


グラナダTVのドラマ,そのままの入り口です.


隣はハドソン婦人のレストランでした.
ちなみに,この建物は本当にヴィクトリア朝の頃からあるらしく,架空の物語とはいえ,まんざらでもないんです.


係員は当時のスコットランド・ヤード(イギリス警視庁)の格好です.


こちらは向かいのビル.カムデン・ハウス,となると空き家の冒険を思い出しますが,ここは1915年建造とのこと.


ホームズの机には1880年頃のタイム誌(本物),化学薬品が.


ここでホームズとワトソン博士,依頼人がお話しをするわけです.
というわけで・・・


個人的にはワトソン博士かポアロの方が似合っていると思いますが,まぁ致し方ない.


これはホームズが壁に打ち込んだヴィクトリア女王のイニシャル.
「マスグレーヴ家の儀式」の冒頭にその挿話があります.


ヴァイオリンはホームズの趣味でしたね.


枕元には「蜂とその飼い方」なる本が.
晩年に探偵を引退して養蜂家に転身したホームズならではの演出でしょう.


イギリス各地の情報が書かれている百科事典.


「赤毛連盟」で大英百科事典を写しているところ.


「ボヘミアの醜聞」での一幕,かな?


「バルカヴィル家の犬」です.


最大の宿敵,モリアティ教授.


「犯人は二人」でミルバートンが殺されるところ.


この残念な絵は「マスグレーヴ家の儀式」で,宝冠を手に入れたものの愛人に殺された執事です.


唇のねじれた男.


この残念な方は,「まだらの紐」の犯人です.

ここまでで90分を消費.残された時間は,あと4時間30分です!
とりあえず地下鉄でピカデリー・サーカスに向かいます.


これぞロンドン,2階建てバス.

このエロスの像が有名なのだそう.
周辺の雰囲気的に,ハチ公みたいなものでしょうね.


名画が立ち並ぶナショナル・ギャラリー,ですが,時間がないので通るだけです.


トラファルガー広場に来ました.


海軍門です.ここからバッキンガム宮殿を目指します.


ヴィクトリア女王記念碑です.バッキンガム宮殿の目の前にあります.


バッキンガム宮殿です.残念ながら,中を見ている余裕はありません.


今日は衛兵交代式はないので,遠目に見るだけです.
ここまでで2時間30分を消費,残る時間はあと3時間30分です.

ここからグリーンパーク駅まで歩き,地下鉄で大英博物館を目指します.
その前に,ピカデリー・サーカスで途中下車してファストフードで昼食を済ませました.


大英博物館に来ました.あと2時間30分しかありません.


グレートコートです.残念ながら素通りします.
ちなみに,大英博物館は入場無料です!!!


ロゼッタストーンです.これが見られれば満足.


エジプトの宝物たちが集まります.

ヒエログリフが書かれているレリーフ.


雰囲気がガラッと変わりましたが,アッシリアです.


ライオン狩りのレリーフ.
世界史の教科書で見ましたね.

続いて古代ギリシア.


パルテノン神殿のレリーフ.


ギリシアと返還問題でもめている,パルテノン神殿の彫刻群です.


ここで一区切りして,ショップを覗きます.


ありました,ガーガーチキンで有名なラバーダックです.


モアイ像.初めて本物を見ました.


アフリカの神様.スゴイ造形ですね.ガンダムの敵メカみたいです.


再びエジプト.ミイラです.


古代エジプトで埋葬された遺体だそう.
日本人の感覚だと,いくら古代人でも略奪して展示品として扱うのは・・・


突然出現した和同開珎


ジンバブエドル.これでもスーパーインフレの前という.
印刷代の方が高い例として展示されていました.


ポートランドの壺.古代ローマです.


アウグストゥスの顔です.

と,ここまでざっと2時間で見て,キングスクロス駅に戻ります.
1時間余ったので,荷物預かり所の真上のパブで一杯.


ここまで全く無駄のない行動で動けましたが,
このブログを見て勘違いされると困るので,念のため注意をさせて下さい.
6時間で,1時間の余裕を残してこれだけ回るためには,


  • 地下鉄の移動や乗り換えが駅の案内表示だけでスムースにできる
  • 地下鉄の路線図が頭に入っているか,事前に計画を綿密に建てておく
  • 町中では迷わず,地図を片手にスタスタ歩ける
  • 博物館や名勝では,解説を読まなくても,見ただけである程度わかる
  • 一人である

などなど,かなり条件が揃わないと無理だと思います!
もちろん,案内人がいればそれに越したことはありませんが.

では,予定通りダラムに向かいます.