バイオマスモノマーを用いた主鎖生分解性ゴムの開発と機能化

髙坂泰弘
(信州大学繊維学部 テニュアトラック助教)

2017年1月17日火曜日

学生実験4 分子設計を体感する

ここ最近は,学生実験の話題を連載しています.
(未読の方はこちらをどうぞ.)

毎度ながら,今回の授業の基本方針を再掲します.

1. 化学反応が目で見てわかる
2. 分子設計が高分子の材料特性に与える影響を触って体感できる
3. 同じ物質を異なる手法でで作る
4. 定番ではなく,安直なネット検索では資料がヒットしない
5. 最新の研究成果を織り込む

今回は, 2. 分子設計が高分子の材料特性に与える影響を触って体感できる がテーマです.

1. 化学反応が目で見てわかるのときにも書きましたが,
化学は対象(原子・分子)が目に見えないので,イマイチ実感しにくい学問です.
そこで「分子を設計」なんぞ言われても,何のことやら想像できないのではないでしょうか.

ですが,ここで詳しく解説しても蛇足なので,後で実験内容とともに説明するとして,
まずは話を学生実験に戻します.

実は今回,上記の5つの基本方針とは別に,実践したいことがありました.
それは,チームプレイです!

一般的な学生実験では,1人~数人単位で与えられたテーマに沿った実験をします.
これは,個人の技量や知識の育成が目的であることに加えて,
50~100人以上を一斉に指導する事情から,管理統制が取りやすいこと,
あるいは教授内容に不公平を生じさせないこと,などが理由でしょう.

一方,研究室や企業ではチームプレイも大事です.
自分の実験が他人の成果に影響を与える,そんな状況が1回くらいあってもよいのでは?と思いました.

個々の実験に責任を持たせることも重要ですし,
何より

「他のみんなと結果を比べて見よう!」


というのは,ワイワイ実験できて何となく楽しそうですし,大人数だからこそできる仕事もあるはずです.

それで,初めは

「1人1点ずつ何かの数値(例えば反応速度など)を実測して,
クラス全体の結果をグラフにプロットして繋ぐと,理論直線と一致する」

というアイディアを考えました.下の図のようなイメージですね.
(ちなみに,これは0次反応の模式図ですが,こんな現象は滅多にないので悪しからず)



しかしながら,これは結構残酷な実験で,理論値との誤差の大小から実験の得手・不得手が一発でわかります.
上の図の場合,G君の結果だけ直線から大きく外れていて,明らかに何かおかしいですね.
これは,かなり露骨に吊し上げている印象です.

それで,数値化するのはやめて,質感の違いを体感して貰うことにしました.

今回は,ポリウレタンを作ります.
ポリウレタンにも色々ありますが,今回はエラストマーと呼ばれるゴム状の弾性体を合成します.
ゴム靴の底の材料,あるいは卓球ラケットのゴム,と言えばお分かり頂けるでしょうか.

それで,改めて冒頭の

2. 分子設計が高分子の材料特性に与える影響を触って体感できる

です.

班ごとに,原料の組成(配合比)を変えて貰うことにしました.

ある班では予定通り柔らかいゴムになりますが,
ある班ではカチコチの樹脂に,ある班では全く靱性のない,脆い材料になりました.

最後に全ての班の試料を集めて品評会をやって,原料の組成がゴム(もはやゴムですらない試料もありますが)の性質にどう影響するのかを考えます.

もちろん,背景となる理論や知識はその場で講釈しますが,百聞は一見に如かず,現物があると理解しやすく,また記憶にも残りやすいものです.

こうして,学生実験の4日目も無事に終了しました.






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