バイオマスモノマーを用いた主鎖生分解性ゴムの開発と機能化

髙坂泰弘
(信州大学繊維学部 テニュアトラック助教)

2017年6月27日火曜日

真空ライン復活!!

重合実験に欠かせない真空ライン.

当研究室でも2基を有していましたが,
先日,前職場より不要になった廃棄品2基を譲渡して頂きました.

さらに,不足していた器具も腕利きの職人さんに特注で作成を依頼し,
先月ついにすべてのパーツがそろいました!!

あいにく,学会や講義続きで時間がとれず,組立作業が遅れていましたが,
本日無事に完成と相成りました.

それでは,その姿をご高覧下さい!




現有の真空ラインと,若干設計が異なるのですが,
1箇所だけ大きく違う点があります.

このお話は,また次回に.

2017年6月23日金曜日

3度目の正直!事実は自分の目で確かめろ!!

学会シーズンも終わり,実験に注力できる季節になりました.

今週の実験は,これです.


あ・・・もう飽きたって!?
そんなこと言わずに,見てって下さいよ!

ええ,臭素です.

実は,前回の実験も成功とは行かず,3度目の実験となりました.

化学反応としては大して難しくはなく,これまで危険なところ以外は,新人君に任せていたのですが,どうも上手く行きません.

それで,今回は私自身が直接,実験することにしました.

薬品や反応の性質などの事前調査から,実験ノートの記録まで,すべて学生に任せず,自分で責任を持って実験します.

今回は念を入れて,購入した試薬を事前に精製するところから始めました.
といっても厳密に実験している時間はないので,真空蒸留という荒技でショートカットしましたが.こちらは,その真空蒸留の様子です.



以前に述べましたが,
本学ではテニュアトラック制度を理念に忠実に実施しているため,
私のような若手研究者でも,研究室を独立して主宰しています.

当研究室はまだ黎明期ですから,いろいろ試行錯誤して研究の方向性を模索したいと考えています.むろん,チャレンジングな実験を沢山しますので,新しいテーマの開始直後には,今回のように成功しないこともしばしばあります.

本来,研究室の主宰者は研究統括や研究資金の獲得,
論文や講演などの成果報告に注力すべきですが,

私は実験科学者です.

私が企画した実験に「失敗」したと言われても,

自分の手で確かめないと信用できません.

実は学会直前にも,同様のケースで別の新人君の実験を代行し,成功裏に納めていました.

さて,今回はどうなるでしょうか・・・?
まずは実験の様子をご覧下さい.



あ,言い忘れましたが,研究室に新しいカメラを導入したので,動画で実験風景をお伝えすることができます.どうもブログの仕様で,解像度は低くなってしまうようですが.

この動画では,

臭素が滴下されて反応し,退色していく様子

がよくわかります.

実は,ここまでは新人君でもできます.
もちろん危険な臭素は私が取り扱うのですが(そもそも劇物指定されていますし),
滴下するだけなら,そうそう失敗しません.

問題はここからです.

この反応で生成した化合物ですが,
催涙性が極めて高く,この状態で取り扱うのは極めて危険です.

そこで,さらに次の反応を実施して,
安全な化合物に誘導する必要があります.

私は直感的に,この2段階目の反応が思うように進んでおらず,実験が成功しないのだと考えていました.以前の反応の様子や分析データも,その可能性が極めて高いことを示していました.

そこで,今回は事前に類似の反応に関する文献を調査しつつ,疑わしい要素をすべて排除するように,入念に実験をしました.

例えば,粉末状の試薬を加える際に,カタマリを細かく砕く,とか.
単純な話ですが,結構重要だったりします.

で,やってみると,反応の様子が以前と全然違う.
文献の記述に近い兆候が見られています.

それから,なんやかんや,ありまして・・・



フラスコの底に,無色(白色)の針状結晶が出現しています!
これこそが欲しかった化合物であると思われます!!

これを原料に,新しい高分子が合成できるわけですね.

まだ生成物を分析するまで安心はできませんが,ひとまず成功と考えて問題ないでしょう.

やはり,自分で実験することが大事です.



2017年6月17日土曜日

復活のBr2 ~その後~

前回,臭素を使った再実験の予告をしました.

こんな感じです.


まずはアンプル管を取り出します.
こんな感じです.


あ,新しくカメラを購入したので,解像度がめっちゃ良くなっています!
そんなこと聞いていない!? では,実験をどうぞ.


こちらが反応装置.実際には前日のうちに組上げておいて,当日に必要な試薬を加えます.
今回は3つ口フラスコを使い,
水道に近い左側に冷却水を流す還流管(熱い蒸気を冷却,凝縮して循環させる装置),
右側に滴下ロート(試薬を1滴ずつ加える装置),
真ん中の口は固体を投入・回収する用に空けておき,反応中はガラス栓で密栓します.

さて,臭素の登場です.


と,散々煽りましたが,正しい手順を守って,入念な安全対策のもとに,落ち着いて行動すれば,何ら怖い試薬ではありません.

・・・ですが,配属されたばかりの新米学生には覚えることが(技術的にも知識的にも)多すぎるため,この時期は私が代行して実験します.


フラスコの右側,滴下ロートの投入口から臭素が壁伝いに1滴ずつ落とされていきます.
ご覧のように,反応すると臭素 (Br2) が消滅するため,臭素特有の褐色も退色します.



それにしても,いい天気です.
実験結果も,こんな風に綺麗に行ってくれると嬉しいのですが.

2017年6月12日月曜日

苦難再び!復活のBr2

タイトルがものスゴイことになっておりますが,
実験室はもっとスゴイことになっております.


ええ,ヤツが復活したんですよ!ヤツが!

紆余曲折あって,もう1回やり直しです.いやはや・・・

2017年6月6日火曜日

〔学会レポート〕口頭発表とポスター発表

高分子学会年次大会@幕張が終了しました.

ベルギーから連結で,さらに別件の打ち合わせで連泊したので,かなり疲れました.
自宅に戻ると,出発前はまだ寒くて長袖 + ジャケットだったことを思い出して,驚いています.もちろん,今日は半袖で出勤です.

今回の学会は自身では
英語口頭発表1件,ポスター発表2件
をこなし,
学生や共同研究も合わせると
合計10件
も発表したことになります.

確か昨年は5,6件だったはずなので,準備に疲れるのも当然ですね.

さて,学会には口頭発表ポスター発表があります.

口頭発表は皆さんがイメージされる「学会」に近く(化粧品や殺虫剤のCMでありますよね),プロジェクターで投影したスライドで,大人数を前に研究成果を発表します.
たとえば,こんな感じ.



発表時間や質問時間が規定されているので,研究成果はもちろん,わかりやすい資料作り や 話術 も求められます.

大人数を前に発表できる利点はありますが,データが少ない場合は時間を埋めるのも大変ですし,逆に多すぎる場合は要約しながら説明する必要があるので,入念な準備が必要です.言うまでもなく,あがり症の方には苦痛ですよね.


ポスター発表は,壁に掲示したポスターで成果を発表します.

例えばこんな感じ・・・と,写真がありません!

いや,あるのですが聴衆の顔まで写っていて,ここに無断で掲載できないのです.
ポスター発表は相手が映り込むくらいに距離感が近いのが特徴です.
時間制限のない少人数ずつのフリートークなので,たくさん質問をぶつけることも,理解できない部分の説明をもう一度お願いすることもできます.

今回,両方の形式で発表して,ポスター発表のよさを再認識したのですが,長くなったので次回に回します.



2017年6月5日月曜日

(学会レポート)ポスター発表って好きです

前回,学会における口頭発表ポスター発表の違いについて述べました.

口頭発表では大人数に発表できますが,高い発表技術が要求されます.
このため,
口頭発表はポスター発表より上位にある
と見なされることが多く,例えば研究業績の評価でも,「国際会議」での「口頭発表」のみが重視される傾向があります.

今回,合成化学の研究はポスター発表が学会の指定場所でした(注:今年の高分子学会は合成がポスター,物性が口頭発表で,来年は逆転)
加えて学生が卒業ないし就職活動で参加できなかったため,久しぶりに私自身でポスター発表です.

それで,ポスター発表の良さを再認識しました.

まず,距離感が近いこと.
学会の主な聴衆は大学院生ですが,特に博士課程の学生は柔軟な思考回路をしていて,いい提案をくれるものです.

ところが,口頭発表の会場で提案をするには,かなりの勇気がいります.
もし,トンチンカンな提案をしたら,大恥という以上に,貴重な質問時間を無駄に割いたという意味で,発表者や他の聴衆に失礼だからです.

その点,ポスター発表では議論が活発になりますし,むしろ個人相手に説明させておいて,「ああそう」の一言で帰ったら,それこそ失礼です.
それで何かしらの意見を言うことになるのですが,分野や先入観にとらわれない,学生の意見は新鮮で,非常に貴重なんです.


企業の研究者が相手の場合はどうでしょう.
この場合,その場で商談・・・とまではいきませんが,その前振りくらいはできます.
例えば,「うちの商品でこんなのがあるけど,興味ない?」とか,「今度詳しく話を聞かせて下さい」とか.
学生とこんな生々しい話をするわけにはいきませんから,トップ自ら発表するのにも,意味があるなぁと感じたわけです.


一番面白かったのが,先生同士の場合です.
ポスターに書いていない内容まで含めて,

「実は本当はこうしたかったんだけどね」
「これ,完全に偶然の産物なんですけどね」
「ここをこうしたら・・・?」
「あーでもない,こーでもない」
「こういう構想があるんだけど,どう?」

などなど.今回は場外戦まであって,ポスター発表後に場所を移して,紙とペンで延長戦をやったり.

私は将棋が趣味なんですが,プロ同士の対局だと,終局後に感想戦っていうのがあります例えばこれ.


なんか,先生同士のポスター発表に似たものを感じました.
専門家同士の会話って,楽しいですね.

2017年6月4日日曜日

(ベルギー滞在記4)大満足

先週末にベルギーから帰国しました.
最終日はブリュッセルに移動し,ベルギー名物のムール貝を頂きます.


鍋一杯にムール貝の白ワイン蒸し,そしてフリットことフライドポテトです.

ムール貝は北海から直送されて来るそうで,リーキとオニオンで香り付けしてあります.
ひたすらムール貝を飽きずに一人で食べ続けるわけですが,皆さんそうしているので,そういう食習慣なのでしょう.もっとも,身より貝殻の方が大きいわけですが.

店によって味付けが違うらしく,後で飛行機で会った方の話では,大して美味しくもないのに多くて大変だった,とのこと.
私は名店シェ・レオンで食べたせいか,全く逆の感想で,
とにかく美味しくてスープまで完食でした.

ところで,付け合わせのフリットですが,
なんとここベルギー発祥とのこと.
なので,間違ってもフレンチフライというと嫌がられます.



世界一美しいと言われる広場で,最後の夜を楽しみます.

こうしてあっという間に帰国です.


こちらは研究室にお土産.

レオニダスのベルギーチョコと,
ワッフル発祥の店マックスのワッフルです.

あまりの美味しさに大満足のようです.

実は私も別の意味で満足していまして,
今回の学会では,世界的に高く評価されている,最新の研究成果を広く見聞きすることができました.

2,3年前の話ですが,当時興味があった研究テーマがあって,
研究室を構えたとき,

一瞬手を出そうか頭によぎったアイディア

があります.

このとき,他の同業者や,あるいはまだ会ったこともない新進気鋭のライバル研究者で,

1人や2人同じようなことを考えている人がいるだろうな

と直感して,結局手を出さずにやめたのです.

あれから3年,なんと今回の学会(連結で参加した国内学会を含めて)で,
日独中の各国から,3人もの研究者が,
そのアイディアに基づく研究を発表しているではありませんか!







危なァ!!

やはり機運というか,
あるんでしょうね,

「こーいう研究が必要だ!」

みたいな.


この3年,当研究室はようやく人員・設備がそろったという状況ですから,もし手を出していたら確実に第一発見者にはなれず,後発のマネした人間になっていたでしょう.

国際学会で偵察できたこと,あるいは現在の研究を紹介して牽制できたことで,自分としては満足です.

2017年6月3日土曜日

「化学と教育」誌にコラムが掲載!

このたび,日本化学会が会員向けに発行する「化学と教育」誌にて,拙著

「変貌自在なアクリル樹脂」

が掲載されました.


有料誌なので,部分的な遠景でご容赦下さい.

実は,本件は国際科学技術財団の贈呈式でお会いした,ある方のご推薦で実現しました.贈呈式のメンバーとは現在でも交流がありますが,こうした形で結実すると嬉しいですね.ありがとうございました!