バイオマスモノマーを用いた主鎖生分解性ゴムの開発と機能化

髙坂泰弘
(信州大学繊維学部 テニュアトラック助教)

2017年12月13日水曜日

(論文紹介)金属もハロゲンも用いない安全・安心なポリエステル合成

この度,イハラニッケイ化学工業株式会社との共同でChemistry Letters誌に研究成果を発表しました.
今回は2つ目の論文の紹介です.


Bifunctional Acyl-1,2,4-triazole: An Alternative Monomer of Dicarbonyl Chloride for Metal- and Halogen-Free Polyester Synthesis

Y. Kohsaka,*1 K. Homma,1 I. Mori,S. Sugiyama,2 Y. Kimura2
(1信州大学繊維学部, 2イハラニッケイ化学工業株式会社)
Chemistry Letters, in press (https://doi.org/10.1246/cl.171098)




ポリエステルは,繊維材料やPETボトルはもちろん,自動車部品,電子素子など様々な分野で利用される高分子です.

工業的には,主にエステル交換法という手法でポリエステルを合成しています.
この方法では分子量が大きいポリエステルが生成するという利点がありますが,
200度~300度程度の高温,真空下で反応を行うため,エネルギー負荷が大きいという欠点がありました.

また,反応にはチタン化合物などの金属触媒を用いるのですが,
金属触媒がポリエステル中に残存しやすいという問題がありました.
残留金属はごく微量ですが,半導体など電子材料には悪影響を及ぼしかねませんし,
このようなポリエステルを食品容器に使用することに批判的な意見も出ているようです.

ポリエステルは,ジカルボン酸クロリドからも合成が可能です.
この反応は低温,常圧で実施できる利点がありますが,
強酸性・強毒性の塩化水素が発生するため,
何らかの方法で塩化水素を処理する必要があります.
このため,酸クロリド法は実験室など小スケールでの合成が主でした.

今回の研究では,以前の論文で報告したアシルトリアゾールによるエステル化反応がポリエステル合成にも有効であることを見出しました.

金属触媒もハロゲン(塩素)原子も用いないこの手法は,
上述のような諸問題を解決に繋がります.
また,100度以下の低温でも重合が達成され,エネルギー負荷も小さくなりました.

さて,私は高分子合成が専門ですが,信州大に着任する前は,
主にアクリルモノマーや精密アニオン重合が研究対象でした.

今回はアクリルでもアニオン重合でもないので,
前回に引き続き,またまた未経験の分野での論文となります.

では全くの素人かというと,実は学生時代にポリ炭酸エステルの合成に関する実用化研究をお手伝いしていまして,多少の知識や経験はあったのです.
当時は渋々やっていた研究でしたが,こうしてあの頃の知識が役に立つのですから,不思議なものです.

0 件のコメント:

コメントを投稿